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第八十五話 恐怖のバイキングその五
「デザートまで食べ終えないとね」
「本物じゃないのよ」
「で、それなんだね」
「そういうこと」
 その二人の前にあるのは。巨大なデコレーションケーキであった。五段重ねでかなりのボリュームがあるのが一目瞭然でわかる。
「これとスイカ一個を食べれば」
「完全勝利よ」
「完全勝利!?」
 蝉玉は今のペリーヌの言葉に目を動かした。もう目だけしか動かないといった有様なのだ。
「どういうこと、それって」
「だから。完全勝利はね」
「それを果たしたら無料なんだよ」
 ロミオの言葉である。
「ここの代金がね」
「無料って」
「そう、無料」
 スターリングの言葉を繰り返してみせてきた。
「無料になるんだよ」
「めでたくね」
「そうだったの」
 何気にこんな話が多い八条学園とその周りであった。
「だから僕達頑張ってるんだよ」
「たっぷりと美味しいものが食べられてしかもただ」
「ただ狙いなんだ」
「当たり前じゃない」
「ねえ」
 二人は平然として答えるのだった。少なくとも彼等の中では完全に当たり前のことらしい。
「そんなこと」
「お金は節約しないとね」
「やっぱりお金なのね」
 蝉玉は今のペリーヌの言葉を聞いて己の考えが正しかったことを知った。結局のところ彼女とペリーヌにとってはお金が第一なのだ。
「そうよ、お金は神様よ」
「何よりも大事なのものじゃない」
「それはそうかも知れないけれど」
 スターリングはそれを言われてもあまり賛成はしていない顔であった。
「それでも。あまり極端なのは」
「極端かしら」
「普通だよね」
「普通じゃないわよ」
 また蝉玉が二人に対して突っ込みを入れた。呆れた顔で。
「ここまで凄いのって見たことないわよ」
「同感」 
 スターリングも蝉玉の言葉に同意して頷く。彼女と同じ表情で。雰囲気が一方ともう一方で完全に違ったものになっていた。呆れと平然とに。
「まあ私達はね」
「スイカで終わるつもりだけれど」
「私達もこれで終わりよ」
「スイカとケーキを食べたらね」
「やっぱり食べるんだ」
「だから。ただになるから」
 また話がそちらに向かう。どうもそこから離れない感じであった。
「当然でしょ。さて」
「食べようか」
「ええ、それじゃあ」
 二人はそのデザートを食べはじめた。やはり消えた。二人が気付いた頃にはもうケーキは何処かに消え去ってしまっていてスイカが彼等の前にあった。そしてそのスイカも、であった。
「ああ、蝉玉」
 スターリングは呆然としながらも蝉玉に声をかけた。
「何?」
「僕達も食べよう」
 それを話すのだった。
「驚いていないで。これを食べたら」
「そうね、一割だったわね」
「そう、一割」
 それを蝉玉に告げるのだった。
「一割だしね。それに最後だし」
「気合入れて食べていかないと駄目ね」
「そういうこと。ラストスパートかけよう」
「わかったわ。それじゃあ行くわよ」
「うん、スイカ一つ頑張ろう」
「ええ、わかったわ。それじゃあね」
 こうして何だかんだでペリーヌ達の影響を受けながら二人もスイカ一個を食べ終えるのだった。さっき一個食べたばかりなのは実は忘れてしまっていた。
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