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第八話 お金がないのはその四
「ベッカとのデート、気合入れなさいよ」
「デートって気合入れるものなの」
「当たり前でしょ」
 蝉玉の声の方が気合が入っていた。
「女の一世一代の大勝負なのよ、デートってやつは」
「蝉玉、それはちょっと大袈裟なんじゃ」
 エイミーが力説する彼女を嗜める。ブレーキをかけてきたのだ。
「幾ら何でもそれは」
「私は少なくともそのつもりよ」
 それでも蝉玉の主張は変わらなかった。
「スターリングとのデートだって。下着にまで気合入れてるんだから」
「結局するの?」
「だ、だからね」
 ペリーヌ本人に言われて顔を真っ赤にさせながらも答える。
「そのつもりで向かえってことなのよ。わかる?」
「下着ねえ」
 それを言われると困った顔を見せていた。
「一応お気に入りは幾つか持ってるけれど」
「じゃあいいじゃない」
「シルクとかね。あとミルク」
 牛乳から造られた生地である。この時代においてはかなりポピュラーなものなのである。
「そういうのは持ってるけれど」
「いいじゃない。色は?」
「白も黒もあるわよ」
「そう、黒ね」
 蝉玉はそれを主張した。
「黒のシルク。これで決まりよ」
「そうなの」
 なお今彼女達は教室の中で話をしている。だがそれは奇麗に忘れてしまっている。
「これなら大丈夫よ。いいわね」
「うん、なら」
「いえ、違うわね」
 しかしここでエイミーが割って入って来た。
「下着はやっぱり白よ」
「白なの?」
「お姉ちゃんが言うにはね。男ってのは可愛いものが好きなんだって。そう言ってたわ?」
「どの姉さんなの?」
 エイミーが上に三人の姉がいることはクラスの誰もが知っていることである。かなりの美人姉妹として評判でもある。三人共八条大学の学生であり姉妹四人で暮らしている。
「ベスお姉ちゃんよ」
「ということは三人目のお姉さんね」
「そう、そのお姉ちゃんよ」
 ペリーヌに答えた。
「そのベスお姉ちゃんが言っていたのよ。だから問題ないと思うわ」
 両手を腰に置いて誇らしげなポーズで述べる。
「だからここは白のミルクね。清純にいきましょう」
「白かあ」
「そうよ。それもミルクでね。最高の組み合わせでしょ?」
「言われてみれば」
 ペリーヌはそれを聞いて白に傾きかけた。だがそれは蝉玉が止める。
「何言ってるのよ」
 ここでムキになって言い出した。
「普段はそれでいいけれどこういう時は黒じゃない」
「自然体がいいんじゃないの?」
 エイミーはこう反論する。
「やっぱりそういう場合はさ」
「何言ってるのよ、女の一世一代の勝負よ」
 蝉玉も引き下がらない。
「やっぱり。色っぽく勝負よ」
「色っぽくなら白でもいいじゃない」
「駄目駄目、黒には勝てないわよ」
「白の色気がわからないっていうの?」
「黒には勝てないわよ」
「勝てるわよ。ベスお姉ちゃんはあれでも彼氏は必ずゲットするんだから」
「それは素材がいいんでしょ。やっぱり黒は」
「素材の問題じゃないわよ。確かにベスお姉ちゃんは奇麗だけれど」
 二人はペリーヌを放っておいて言い争いをはじめた。ペリーヌは二人の案を折衷させて白いシルクの下着を選ぶことにした。着飾っていよいよそのベッカとのデートとなった。
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