第六十七話 公園ではその二
「一人っ子だったんだ、あんたって」
「知らなかったのか!?」
今度はルシエンが皆に問う番であった。
「それは」
「ええ、全然」
「今はじめて知ったわ」
「どういうことなんだ」
ルシエンはそのことにあらためて唖然とする。表情は唖然というよりも憮然といったものであった。
「俺は影が薄いのか」
「別にそうじゃないけれど」
「ねえ」
これは否定される。このクラスにおいて影の薄いメンバーというものは存在しないと言って過言ではない。何処までも個性的な面々が揃っている。
「それはないわ」
「全くね」
「じゃあどうしてこれが知られていないんだ」
ルシエンはそこにクレームをつけるのだった。
「俺が一人っ子だってことに」
「だって普通はねえ」
「兄弟でアパート借りるじゃない」
この学園ではそうである。誰もが兄弟全員で同じアパートに住んでいるのである。これは居住費節約の理由がかなり大きかったりする。
「それが一人だから」
「大変じゃない?」
「従兄弟が大勢いるからな」
どうやらこの学園には彼の従兄弟が大勢いるらしい。彼にとって幸運なことに。
「それはないな」
「何だ、じゃあ従兄弟同士でも」
「一人っ子はあんただけなんだ」
「ああ」
それも認める。皆はここで彼を余計に奇異に見るのであった。
「やっぱりねえ」
「珍しいわね」
「こんなことで珍しいのか」
ルシエンは今度は開き直ってきた。遂に。
「どういうわけなんだ、これは」
「どういうわけって言われても」
「やっぱり珍しいから」
それでも彼女達の言葉は変わらない。相変わらずであった。
「ねえ」
「そう言われてもよ」
やはり開き直る。
「俺に兄弟は今のところいないし。だからといって」
「あんたには関係ないわよ」
「それはね」
彼女達もそれはわかっているのであった。
「とにかく一人っ子って」
「珍しいのよ」
「そりゃ御前等弟いるしな」
ルシエンはふてくされながらアンネットとウェンディに対して言う。
「正直羨ましいよ」
「まあまあ」
ここでやっとピーターが入って話を収めるのであった。それから彼が言った。
「ところでそっちはどうなの?」
「ああ、あの二人ね」
アンネットはそこにふと気をやる。
「どうなったかよね」
「うん。そっちに来ているかな」
「今来たわ」
公園の中を二人並んで歩いている。うきうきした様子である。
「何かもう」
「そうだな」
アンネットとルシエンはそんな二人を見て述べた。
「ムードできてるわよね」
「いい感じだな」
「あれっ、もうなんだ」
ピーターはそれを聞いて意外といった声を出すのであった。
「早いね、また」
「そうよね。もうなんて」
「そうだな。しかし」
だがここでルシエンは二人をさらに見て。そのうえで言うのだった。
「何かまだ硬いな」
「硬い!?」
「ああ、見てみろよ」
アンネットにも見るように言う。見てみればティンはともかくカムイの様子がぎこちない。視線が泳いでいて手が自分でもどうしていいのかとふらふらしていた。ルシエンはそこを指摘しているのである。
「わかるな」
「そうね」
アンネットもそれに頷く。気付いたからだ。
「どうしていいかわかっていない感じかしら」
「そういえばあいつはじめてだったよな」
ルシエンはカムイについてまた述べた。
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