第八話 お金がないのはその一
お金がないのは
濃い顔触れが揃っていると言われることの多いこのクラスであるがその中でもとりわけ変わっているというとやはり誰なのかわからない。だがペリーヌ=グラフトンが変わっていないという者はまずいない。
ある者は彼女を気分屋といいある者は前向きだという。白い肌に茶色の長い髪、おっとりした外見に黒い眼の外見は普通の女の子である。
しかし。その性格が問題なのであった。それの為に彼女は変人と呼ばれている。
「失礼するわよね」
「何がよ」
すぐに蝉玉とエイミーから突っ込みが入る。
「だって私が変わり者だなんて」
「あんたが変わっていないのなら誰が変わっていないっていうのよ」
「同感。このクラスに変人は誰もいなくなるわよ」
この二人にもあまり言う資格がないのはここでは置いておく。なお連合においては変わっているというのはある意味褒め言葉である。個性を重んじる連合では個性の証となるからである。それぞれの国でさえ強烈な個性を持っている国ばかりであるから個人もそれに同じなのである。
それでこのペリーヌは服装も地味である。シックな白いシャツとロングスカートを好む。今着ているのは赤いスカートであった。
「このスカートはね」
「ええ」
蝉玉とエイミーが話を聞いていた。
「一〇テラ」
「だったのよ」
「一〇テラ!?」
「まさか」
二人はそれを聞いて思わず声をあげた。
「ちょっと、何よその値段」
「そんなに安い筈ないじゃない。おもちゃみたいな値段じゃない」
普通スカートといえば少なくとも六〇テラはする。一〇テラというのは有り得ない値段なのだ。
「そういうお店で買ったのよ」
「ああ、こっちでいうネオ=クロみたいなところね」
「それだったのね」
それを聞いて二人は納得した。ネオ=クロとは日本にある服やそうしたものを取り扱っている企業でありかなりの安売りで知られている。
「それで一〇テラだったのよ」
「そうは思えないわよね」
「ええ、いい生地よね」
「安くて生地がよければそれでよし」
ペリーヌはにこやかに笑ってそれに応えた。
「違うかしら」
「まあね」
「デザインもいいし」
「デザインも見てたの?やっぱり」
「勿論よ」
にこりと笑って述べる。
「当然でしょ。それも考えなきゃ」
「成程」
「そういうところは流石よね」
二人はまずそれは認めて褒めた。
「けれどさ」
だが相手はその変人と定評のあるペリーヌである。ここで怯むことはなかった。
「それ、見つけるのにどれ位時間かけたの?」
「よかったら教えて」
「ほんの三日よ」
「三日って・・・・・・」
「ちょっと待ちなさい」
ここで呆れた顔になる。ペリーヌの秘密はここにあったのだ。
「服買うのに三日!?」
「何でそんなにかかるのよ」
「あら、いい服買うのなら当然じゃないの?」
ペリーヌはしれっとした顔でそれに応える。
「まず見つけるのに一日」
彼女は言う。
「チェックに一日、そして値切るのに一日よ」
「安売りショップでさらに値切るか」
「あんた、鬼ね」
「鬼でも悪魔でも安く値切ればいいのよ」
発想が違う。
「そうじゃないの?」
「それって南アフリカの常識!?」
エイミーが呆れきった顔で尋ねる。ペリーヌの生まれは南アフリカなのである。かっては白人と黒人の対立があったがそれはもう千年も昔の話。今では白人と黒人どころか様々な人種の混血がある連合らしい国である。
「まさか、皆そこが甘いのよ」
ペリーヌは残念そうに言う。
「そういうのがないのよ」
「まあそうよね」
「普通はそんなことしないわよ」
「残念よね」
悲しげな顔で述べる。
「お金の大事さがわからないなんて」
「いや、それ違うから」
「あんたの場合は守銭奴っていうのよ」
「いい言葉ね」
そう言われたことにうっとりとしている。そう、彼女が変人と呼ばれる理由はここにあった。
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