第六十五話 セッティングその三
「はっきりわからないとね、最初は」
「そういうこと。まああいつかなり目立つけれど」
これについても問題ないのであった。何しろこのクラスの一員である。目立たない方が不思議である。なおカムイはその中でも目立つ方である。
「ここは安全牌、と」
「それからかな、問題は」
ピーターは腕を組んで考えながら述べた。
「どうなるかな」
「最初は公園よね」
次に三つの場所について言及するのだった。
「確か」
「そこでまずはじっくりとムードを作るのが基本よ」
ナンシーがそう力説してきた。
「わかるかしら、最初が肝心なのよ」
「それはね」
ウェンディもピーターと何回もデートしている。だからそれはよくわかった。
「わかるわ、よくね」
「そう、ムードを作れば勢いっていうのが出来るから」
ナンシーはさらに力説する。
「そこが肝心。その点あの公園は最高よ、何しろ」
「何しろ?」
「コスモスがあるから」
急にうっとりとした口調と顔になるナンシーであった。
「あそこで二人並んで歩くのが最高なのよ。それだけでもう完璧ね」
「そうなんだ」
「そう、完璧よ」
そのうっとりとした口調でまた言うのだった。
「これだけでいいかもってレベルね、あのコスモスの中は」
「わかったわ。それにして」
「何かしら」
ここでナンシーはウェンディの言葉に応えるのだった。
「本当に随分よく知ってるわね」
「そうだね」
彼女の言葉にピーターも頷く。
「コスモスがあるなんて。よくもそこまで」
「しかもムードまで」
ピーターはそこも指摘するのだった。
「細かいところまで。よくそこまで」
「知っているね、本当に」
「ま、まあね」
右頬を右の人差し指でかきながら答える。内心しまったとも思っているのは内緒である。もっともそれも知っている人間からすればモロバレであるが。
「ちょっと勉強したから」
「ちょっと!?」
ウェンディはそこにも疑念を覚えるのであった。
「何処でよ」
「あっ、それは」
また失言だった。ナンシーはそれに対しても慌てて取り繕う羽目になった。
「本で。ほら、この話が出てね」
「そうなの」
「そうなのよ、何かと勉強になったわ」
「成程ね。恋路もそれで勉強できるんだ」
ウェンディはそのことにあらためて納得したのだった。彼女は少なくともナンシーのことには詳しくはなかったから彼女と後輩のことには気付かなかったのだ。
「わかったわ」
「そういうことよ」
ナンシーはこれ以上は前で出ようとしなかった。墓穴を掘るだけだと思ったからだ。
「だからね。そこは最初なの」
「わかったわ。それで次は」
「並木道だけれど」
ダイアナが言う。
「ここは二人歩けばそれでいいわよね」
「そうね」
ウェンディは彼女の言葉に頷いた。
「枯れ葉がムードを作ってくれるから」
「そうそう」
「銀杏じゃないし」
ここも重要であった。
「銀杏は雰囲気あるけれど匂いがねえ」
「それが困るのよ」
ダイアナもウェンディのその言葉に一緒に困った顔になるのだった。
「どうしようもないから」
「しつこいしね」
銀杏の香りは存外しつこい。彼女達もそれはよく知っていた。
「どうしたものやら」
「けれどそれがないのは助かるわ」
そのうえで言い合うのだった。まずはそれが助かっていた。
小説・詩ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。