第六十話 京風料理その七
「韓国という国を見ているな」
「そうか」
「ああ」
韓国は連合においてもかなり強烈な個性を持つ国として知られている。しかも強烈なだけではなく自己主張も極めて激しい国でもある。
「よくな」
「そうか。とにかくあの料理味はしなかったな」
「結局それかよ」
ロザリーはあらためて呆れた。
「全くあんたは」
「しかし。あれだな」
だが彼はここで言うのだった。
「今口元からな」
「感じるか」
「よく感じるさ」
今度はダンに答えた。
「香りだよな」
「そうだ。いい香りだ」
ダンは満足そうな声で述べた。
「今までに食べた食材が。見事なハーモニーを醸し出してな」
「これがか」
京料理の秘訣であった。ここにあったのだ。
「どうだ?いい感じだろ」
「今までこんなことはなかったよ」
「そうだね」
ロザリーも頷く。
「これが京料理なんだね」
「よく言われていたことだが」
ダンは少し薀蓄になった。
「京料理は味だけじゃない」
「味だけじゃないのか」
「風味も楽しむものだってな。言われていたんだ」
「成程ねえ」
ロザリーはそれを聞いてしきりに納得した顔になっていた。
「そんなもんなのか」
「今までは違っただろ」
ダンはロザリーと洪童だけでなく皆に告げてきた。
「やっぱり。味だけで」
「そうだな」
アルフレドがそれに頷く。
「香りも楽しんでいたがここまではな」
「そういうことだ。それが京料理と言うものらしい。俺も今日やっと思い出した」
「それ考えると凄いわね」
七海があらためて言う。
「彰子ちゃんのお兄さんって」
「そうかなあ」
ところがその彰子はいつもの様子であった。
「そうは思わないけれど」
「いつも側にいたら案外わからないものだ」
ダンは哲学的な言葉を述べてきた。
「案外な」
「そうなの」
「そんなものだ。近くだとわからないが遠くからだとわかる」
そしてまた言う。
「その凄さがな」
「兄さんって凄いんだ」
またしてもとぼけた言葉であった。
「それじゃあ」
「そうだよな。今回は何かと勉強になったぜ」
どうやらカムイが一番何かを掴んだようであった。
「よし、俺は決めた」
「何を決めたのよ」
「それは明日からわかることさ」
根拠がないのではないかと思える程底抜けに能天気な言葉であった。
「明日からな。じゃあ今日はこれでな」
「おい、二次会はいいのかよ」
「いや、それは参加して」
ロザリーの言葉にすぐに戻って来た。
「それから明日に」
「そういうところはやっぱりあんただな」
そんなカムイに対して突っ込むロザリーであった。
「二次会って聞いて戻って来るのが」
「気にしない気にしない。とにかくな」
「明日からのあんたに期待だね」
「そうさ。俺はやるぜ」
一人燃えていた。まるでフランツの様に。
「何があってもな」
「何に燃えてるかわからないけれどさ」
ロザリーが燃えている彼にまた突っ込みを入れた。
「皆に迷惑はかけないようにな」
難しい注文を出した。そしてそれが裏切られることも大騒動になることもわかっていた。それは既に予定されたことであったからだ。
京風料理 完
2007・10・7
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