第六話 赤い髪の漫画家さんその三
「ううむ・・・・・・」
「何だかなあ」
「やっぱりっていうか」
スターリングとトムはそんな彼を見て何と言っていいかわからなかった。
「参った、僕の出る幕がなかった」
「予想通りね」
アンは相変わらず冷たい。
「それでギルバート君」
「んっ!?」
ルビーの声に顔を向けた。
「私も日直なのよ」
「ああそうだったな」
言われてやっと思い出す。
「だが君は真面目にやっているし」
「いいのよ、私がやっておくから」
「それはよくない、ああした男は甘やかしては」
「男は甘やかされて幾らよ」
アンがまたしれっと述べる。
「女は甘やかして幾らだし」
「アンってよ」
「何か色々あったみたいな言い方だよね」
それを聞いたベンとスターリングがまた言う。彼等はどうにも戸惑いを隠せなかった。アンの言葉には学生とは思えないものがあったからだ。
「だからそんなに騒がない」
「アン君、君は一体僕に対して」
「かららわれてるわよね」
蝉玉はそれに気付いているが本人には言わない。
「アンも意地が悪いっていうか」
「そうなの」
当然彰子はそれに気付いてはいない。
「ううむ、まあいい」
埒があかないと見たギルバートは止むを得なく戦略的撤退に移った。
「あいつは僕が絶対に捕まえる」
そうルビーに言う。
「だから待っていてくれ。それじゃあ」
「もうすぐ授業はじまるんだけれど」
「考えてないわね、そこまで」
アンはネームを見ている。
「すぐに帰ることになるからいいわ」
「そうなの」
「そうよ」
ルビーにも同じ調子で返す。
「だから安心して」
「う、うん」
「それにフック君もちゃんと日直の仕事はやってくれるわ」
「わかるの?」
「ええ、わかるわ」
相変わらず感情のない声であるがそこには確固たる自信があった。
そして放課後。実際にフックは教室の中で一人で日直の仕事をやっていた。
「どういう風の吹き回しだ?」
ギルバートは彼に問う。
「君が真面目に日直の仕事をやるとは」
「いや、ちょっとな」
フックはそれに応えて言う。
「交渉で」
「交渉!?」
「まあギブアンドテイクってやつさ」
「何のことかわからないが」
「まあおめえはわからなくていいよ。関係ねえことだから」
「そう言われるとかえって気になるな」
「全く関係ないことだぜ、本当に」
「そこまで言うのならいい」
他人のことにあれこれ言うがプライバシーにまで介入するような男ではない。そういったところはきちんとわきまえていた。そうした男なのである。
「ではな」
「ああ。じゃあ日誌書いたら先生に渡しておくからよ」
「頼むぞ。それではな」
「また明日な」
最後に挨拶をして別れる。日誌を書き終えたフックは教室を後にして職員室へと向かった。そして担任の先生に日誌を手渡すのであった。
それが終わって廊下を歩いていると。前にすっとアンが出て来た。
「お疲れ様」
「さっきの話だけどよ」
「ええ」
アンはフックの言葉にこくりと頷く。それから言った。
「・・・・・・来て」
実に思わせぶりな言葉だった。俯いて視線を逸らしての発言だったので余計に効果がある。まるで狙っているかのようであった。実際に狙っていた。
「それじゃあ」
フックもそれに頷く。そして学校の端にそっと入って行く。如何にもといった感じの妖しい動きであった。アンはそれを楽しんでいた。
端に入るとポケットから何かを出してきた。
「これよ」
それはクラスの女の子の写真であった。フックはそれを受け取る。
「生写真だから」
「何時の間にこんなのを?」
見ればどれもごく普通の写真である。着替えや水着は流石にない。それでも奇麗な写真ばかりであるのは確かだった。どうやって撮ったのか不思議な程である。
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