第五十六話 スペードの女王その一
スペードの女王
ラビニアをポーカーで一泡吹かせることにした。フックはそのことでタムタムと打ち合わせに入るのだった。というよりはクラスメイト達に無理矢理それをさせられていた。
「ちぇっ、何だよ」
ハンバーガーショップに拉致監禁されてふてくされていた。
「そんなのしなくてもいいじゃねえかよ」
「馬鹿言え」
すぐにクラスメイト達から駄目だしが入る。
「ラビニアはあれよ」
「ポーカーの名人なんだぞ」
そう彼に告げる。顔に少し険が入っていた。
「それで何もしないで勝つなんて」
「甘いぞ、おい」
「勝負は時の運だぜ」
それに対するフックの言葉はそれだけで何もわかっていないことがわかるものだった。
「だからよ。そんなのはいいじゃねえかよ」
「よかねえって」
「そうよ」
彼等はまた言う。
「それで負けたらどうするのよ」
「御前その時はどうなるかわかってるな」
「大丈夫だって言ってるだろ」
それでもフックはわからない。
「俺がやるんだぜ」
「駄目だこりゃ」
「やっぱり連れて来てよかったわね」
皆フックの暢気な様子を見てあらためて思った。
「じゃあタムタムいい?」
「用意できてるわよね」
「ああ」
タムタムは静かにそこにいた。彼は何かノートを開いていた。
「もうな。ラビニアに関するデータも揃っている」
「あれ、早いわね」
皆タムタムがノートを見ているのを見てそう言う。何かもうノートにはかなりのことを書き込んでいる。それも相当細かい内容であった。
「もう揃ったの」
「ああ」
タムタムはまた答える。
「あいつのクラスメイトが教えてくれた」
「クラスメイトが。まあ妥当ね」
皆これには納得出来た。ラビニアは非常に底意地の悪い性格でありクラスメイト達からもかなり嫌われているのだ。だから情報が用意に集まったのである。
「簡単に教えてくれた」
「簡単になのね」
「コーヒー一杯だった。自動販売機のな」
「安っ」
ラビニアの人気のなさがわかろうというものだった。しかしそれにしてもあまりにも安過ぎたので皆言葉を失ったのである。
「それで手に入った情報だ。そこに俺の独自の調査も入れた」
「そこらへんは流石ね」
「そうだな」
タムタムの情報収集能力にあらためて感心する。流石は野球部の頭脳である。
「見たところあの女はかなり卑劣なポーカーをする」
「卑劣!?」
「どんなの?」
「一言で言うとイカサマだ」
実にわかり易い言葉だった。
「カードを仕込んでおいてそれを出す。それが得意技だな」
「そう。あいつらしいわね」
「そうだな」
皆その言葉に頷く。
「それでだ」
タムタムはさらに話を続ける。
「そのイカサマを封じる為には」
「どうするの?」
「俺に策がある」
タムタムは冷徹な声でそう述べた。
「ちゃんとな」
「それはどんなのなの?」
アンがタムタムに問う。
「私もあいつ嫌いだし。よかったら聞かせて」
「今は内緒だ」
しかし彼はそれを言おうとしなかった。
「フックだけには話しておくが」
「秘密ってことね」
「秘策か」
「そう、秘策だ」
また答えた。冷静な顔で。
「悪いがな。今は内緒だ」
「わかったぜ。それじゃあ」
「そこは任せるわね」
「済まない。それでだフック」
タムタムはあらためてフックに顔を向けてきた。
「次に御前の癖だが」
「今度は俺か」
「そうだ。御前は確かにポーカーは上手い」
まずはそれを認める。これはお世辞だけでなく彼の腕を公平に評価してのことだ。
「それだけだとラビニアにも対抗できる。だが」
「それだけではないっていうんだな」
「わかるな。あいつはイカサマの達人だからな」
またそれを言う。
「普通にやれば負ける可能性が高い。それをよく覚えておけ」
「俺だってイカサマはできるぜ」
フックは不敵に笑ってそう彼に返した。
「そっちの方もな」
「いや、それでも限度がある」
それに関してはフックを褒めはしなかった。
「御前とあの女とではイカサマの腕が違い過ぎる」
「そんなにかよ」
「そんなにだな」
あえてそうフックに言うのだった。
「あれはな」
「あいつが下衆なのは俺だって知ってるぜ」
フックもラビニアが嫌いである。それもかなり。
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