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第五十三話 セーラの屋敷その三
「食べるんだよ、やっぱり」
「さあ、何が出るかしら」
「やっぱりカレーだろうな」
 ダンがそう皆に言う。
「マウリアだから」
「まあそれだろうね」
「けれどそれもよし」
 皆笑顔でダンのその言葉に応える。
「カレー食べてお菓子食べて」
「それもマウリアのお菓子をね」
「マウリアのお菓子?」
 皆の言葉を聞いて彰子がふと声をあげてきた。
「それってどんなのかしら」
「あれ、知らないの?」
 彰子のその言葉を聞いてパレアナが声をかけてきた。
「ひょっとして」
「だって食べたことないから」
「あっ、そういえば」
 パレアナも言われてそれに気付いた。言われてみればそうだった。
「私も食べたことないわ」
「俺もだな」
 ダンもそれを聞いて言う。
「マウリアのお菓子か。どんなのかな」
「ケーキとかそういうもの・・・・・・かしら」
 アンネットが首を傾げて述べる。
「違うかしら」
「ヨーグルトあるわよね」
 ナンはそう尋ねてきた。
「確かマウリアって乳製品食べるし」
「確か、な」
 フランツがそれに応えて述べる。
「あった筈だ」
「じゃあそれはまずあると」
 ナンはそれを聞いてまずは安心した笑顔になった。
「よかったよかった」
「やっぱり乳製品なのね。あんたは」
 ロザリーはそれを聞いてナンに声をかけてきた。
「モンゴルは」
「そうね、やっぱりそれね」
 ナンもその彼女に言葉を返す。
「それと羊、やっぱりこれよ」
「そうなの」
 彰子は楽しそうなナンのその言葉を聞いて声をあげる、
「ナンちゃんは」
「そういうこと。彰子ちゃんは?」
「私!?」
「そう、彰子ちゃんはどうなの?」
 ナンはそう彰子に尋ねる。何気に面白そうな話を聞く顔と目になっている。
「何があればいいのかしら」
「ううん、そうね」
 彰子はそのナンの言葉を聞いて考える顔になる。そうして首を少し傾げさせながら答えるのであった。その顔が実に可愛らしい。しかし彼女は自覚していない。
「やっぱりお米とか小豆かしら」
「あれ?おはぎ」
「それもあるわ」
 そうナンに答える。
「けれどそれだけじゃないし」
「お砂糖とか葛とか」
 意外と何でもあるのが日本の菓子である。メインはやはり主食である米を使うのであるがそこにその砂糖や葛を使ってさらによくしている。和菓子はそういうものである。
「そういうのよね」
「うん。それならいいんだけれど」
 彰子はこう答えるのだった。
「そこのところはどうかしら」
「まあそれはないでしょうね」
 パレアナが彰子に述べる。
「葛はね。絶対に」
「やっぱり」
「だって。マウリアよ」
 それだけで済む言葉であった。
「葛は。やっぱり」
「じゃあお饅頭は」
「それもね。やっぱり」
 ないのである。饅頭は元々中国のものである。中国文明とは全く違うマウリアでそれがあろう筈もない。それは言うまでもないことであったが。
「ないでしょうね」
「じゃあ何が出るのかしら」
 彰子はまた首を傾げて言う。
「一体何が」
「少なくとも何かは出て来る」
 ダンは妙にピントがあっているようなそうでないような答えを彰子に対して言った。
「期待はしていいな」
「そうね」
 素直な彰子はそれにすぐ頷く。ここは彼女の長所であった。
「それなら」
「さて、幾ら何でもカレー味のお菓子はないでしょ」
 パレアナが笑顔で述べる。
「楽しみに。行くわよ」
 一同家の門のところまで来た。そこはいきなり異次元のような場所であった。見たことも聞いたこともない壮齢なものであったのだった。
 ムガール帝国の宮殿を思わせる巨大な門がまるで城のようにそびえ立っている。一同はその前に顔を思い切り見上げさせて立っていた。
「さて、と」
 皆意を決して中に入る。いよいよはじまりであった。


セーラの屋敷   完



                  2007・8・28
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