第四十八話 誰も寝てはならぬその四
「中々いいじゃないか」
「そうだな」
皆その新作を見て言い合う。それを聞いてアンはまずは上機嫌であった。
「けれどさ」
ここでクラスメイト達に言われる。
「何?」
「ここのコマのさ」
フックがあるページの一コマを指差して言ってきた。
「平民の男女って他のコマにも色々言われているけれど」
「え、ええ」
その言葉に顔を強張らせる。ついでに顔が青くなっていく。
「何かしら」
「アンとギルバートだよな」
「さあ」
一旦はとぼけてみせる。白々しいが。
「そうかしら。気のせいじゃないの?」
「いや、違うだろ絶対に」
フックはその言葉を否定してきた。彼もわかっているのだ。
「幾ら何でも苦しいぞ」
「うう・・・・・・」
アンの顔まで苦しくなる。見ればクラスメイト達も彼女に顔を向けている。
「けれどまあ。予想通りだしな」
しかしフックはここでこう言ってきた。
「別に驚きはしないさ」
「そうなの」
「だっていつもじゃないか」
こうも言う。
「御前とあいつが漫画に出るのは」
「まあね」
アンはフックのその言葉にあからさまに不機嫌な顔を見せてきた。痛いところを衝かれた顔である。ギルバートのことになると実に表情豊かだ。
「それはそうだけれど」
「って自分で認めるのかよ」
「開き直ったのよ」
そう言って本当に開き直る。
「今更何を言っても無駄なんでしょ、それなら」
「やれやれ。そうか」
フックは開き直られてかえって拍子抜けした。しかしそれでも言う。
「それでもな」
「今度は何よ」
「あいつは気付いていないんだろ?」
「まあね」
その言葉に頷く。
「気付いていたらそれは」
「気付いて欲しいのか?」
「ええと、それは」
その言葉には返答に窮する。困った顔になる。
「何て言うかね」
「ああ、アン」
ここでベッキーがまた出て来た。そして言う。
「皆それもわかってるから」
「また開き直れっていうの?」
「わかってるじゃない」
ベッキーは突き放したように言う。
「人間開き直るのも肝心よ」
「それでもね」
困った顔の色をさらに深くさせる。何と言っていいかわからないといった顔である。
「何て言うか。その」
「歯切れ悪いわね。そんなのだからあんたは」
「私だってわかってるわよ」
違う方向に開き直ってきた。
「けれどこういうのってあれじゃない。相手がその」
「当たって砕けろでいけよ」
フックが言う。
「どうせあいつ以外皆知ってるんだしさ」
「随分好き勝手言うわね、あんた」
「だって他人事だし」
「何ですってぇ!」
流石にこの言葉には激昂する。しかしフックは相変わらずの気軽な様子で言葉を返す。
「言うに事欠いてあんたは!」
「安心しろ、冗談だ」
フックはすぐにこう返す。
「だからな、そういうのが駄目なんだよ」
「くっ・・・・・・」
あっさりと返されて言葉を詰まらせる。完全にアンの負けだった。
「やっぱり思い詰めてるよな、今」
「ええ」
嫌々ながらもそれを認める。事実だから認めるしかなかった。
「その通りよ。それも悪いっていうの?」
「だから悪いことじゃなくてな。やっぱり言えないんだろ自分から」
「それはね。どうしても」
その項垂れた顔でまた認める。どうにも言葉も弱い。
「その通りよ」
「あいつに気付かせるのが一番だけれどな、それだと」
「だから気付かないのよ」
アンはそれをまた言う。話が堂々巡り気味になってきていた。
「何をしても。この作品だって結構出しているのに」
「困ったもんだな、こりゃ」
フックもこれには流石に言葉もない。
「あいつってこういうことにはこんなに鈍いなんてな」
「鈍いってレベル超えているわよね」
ベッキーも言う。
「この作品のプロットの時アンにも言ったのよ。今貴方が話してるのと同じ内容を」
「それでこの作品が生まれたのか」
「そういうこと。これなら」
また言う。
「主役の王子様とヒロイン二人の顔あんたとギルバートにすればよかったかもね」
「ううん、そうかも」
アンはまた弱った顔になる。
「やっぱり今回も気付かなかったし」
「困ったものだ」
フックも言う。そこへ当の本人がやって来た。
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