第四十五話 終幕は穏やかにその三
「ちょ、ちょっと待って下さいよ」
「とにかくお話を」
「ん!?何だ?」
その言葉に気付いて顔を春香のクラスメイトに向けてきた。
「それで春香は」
「春香ちゃんですよね」
「そうだ」
とりあえずまともになった。
「それで何処のどいつと付き合っているんだ?いるならばこの俺が直々に」
「そんな人いませんよ」
「なあ」
クラスメイト達も顔を見合わせて言い合う。話が全く読めないのだ。
「何が何だか」
「初耳ですよ、本当に」
「嘘じゃないな」
洪童は最初から疑っている様子を露わにさせてきていた。実に素直である。
「それは」
(嘘なんかついたらそりゃもう)
(困った人だよ、全く)
心の中の言葉はそれで終わらせる。そのうえで話を続ける。
「嘘じゃないですって」
「本当に初耳で」
「何だ、本当に知らないのか」
その言葉に一旦立ち止まりまずは辺りを見回す感じで周囲を探った。
「そういえば春香に付き合うに足る奴はいないな」
「いたらどうします?」
「殺す!」
一言であった。
「悪い虫は近付けてはいけないからな。当然だ」
「当然ですか」
「誰であろうが春香に言い寄る奴、虐める奴、意地悪する奴は俺が許さん!」
かなり破天荒だが妹思いなのは間違いない。
「俺が見込んだ男でない限りはな!」
「女でもですか」
「別に友達はいい」
こうは言うが春香の友達にも常に警戒を向けているのが洪童だったりする。その度にこのクラスに殴り込み派手に大暴れしているのである。
「男であろうとな」
「つまり交際相手は駄目なんですね」
「結婚するまで純潔は守らせる」
本当にこの時代では有り得ない考えである。
「何があろうと!」
「はあ、そうですか」
「それはまた」
春香のクラスメイト達もそれは何度も聞いているが納得しているものではない。納得するには相当の異常性が必要だからである。妹が絡んだ洪童は異常なのだ。
「それで何処だ、春香は」
「どっかに行っちゃいましたよ」
「あれ、そういえば」
クラスメイト達はここであることに気付いた。
「明香ちゃんいないわよね」
「あっ、本当だ」
「明香だと」
ここで彼はとんでもない勘違いをしでかしたのだった。
「そいつか」
「えっ!?」
「ちょっと洪童先輩」
見る見るうちに様子がまたおかしくなる。それを見て異変が近いのを感じていた。
「おのれ、間男!」
髪が逆立ち覚醒してしまった。
「我が妹を毒牙にかけんとするは不埒千万!必ずや見つけ出して抹殺してくれる!」
「あ、あの先輩」
「明香ちゃんは」
「何処だ・・・・・・むっ!?」
何かを感じた。あらぬ方を睨みだした。
「そこか、そこなんだな」
「何かに目覚めたみたいだね」
「まともなのじゃないのは間違いないな」
何故か彼等の囁きは耳に入らない。洪童はすぐにその場に向かうことにした。
「こうしてはいられん」
直感のまま何処かへと向かう。その彼の動きは蝉玉達も完全に掴んでいた。
「教室を出たよ」
彼等は屋上にいた。スターリングは携帯を覗きながら皆に述べる。そこに洪童に授けた発信機を付けているのだ。バレンタイン前に警戒して着けたのが功を為したのである。
「そう、遂にね」
蝉玉がそれに応える。パレアナ達もそこにいる。
「じゃあ行きましょう」
「よし」
「じゃあ行くか」
皆それに頷く。こうして屋上を後にして洪童の追撃にかかった。
小説・詩ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。