第四十一話 御前が犯人だその四
「全然平気よ」
「平気なんだ」
「そういうことよ。だから」
「そこまで言うんなら」
その言葉に頷いてみせた。
「任せるって言ったしね」
「そうだね」
セドリックもそれに同意する。
「そう言ったし」
「だから絶対に大丈夫だから」
ルビーの言葉は変わりはしない。
「後は。そうね」
周りを見回した後で述べる。
「あそこがいいわね」
「あそこって?」
「隠れる場所よ」
にこりと笑って二人に答える。
「隠れる場所!?そうか」
セドリックはその言葉にこくりと頷いた。
「罠の前に堂々といても仕方ないしね」
「そういうこと」
これは常識であった。今更言うまでもない程の。
「だから。わかったわね」
「うん」
その言葉にこくりと頷く。
「それじゃあ」
「隠れましょう。いいわね」
「わかったよ」
二人はルビーの言葉に頷き物陰に隠れた。そこからその何物かが出て来て罠にかかるのを待っていたのだ。
「もうすぐだよ」
セドリックは自分の右手の腕時計を見て言ってきた。
「昨日襲われた時間は」
「そうだね」
ロミオも彼に言葉に頷く。
「そろそろだよね。もう暗いし」
「うん。何か昨日よりも日が落ちるのが早いね」
「男心と秋の空」
ルビーは楽しげに呟いてきた。
「秋じゃないけれどそういうことね」
「女心じゃなかったっけ」
「風の中の羽根のの様にいつも変わる男心」
「それも女心だし」
ロミオとセドリックはそれぞれ突っ込みを入れる。
「ちょっと違うよ」
「っていうか正反対」
「女の子も苦労してるの」
アンのアシスタントも務めるからこその言葉であった。
「アンだってね」
「アンはねえ」
「あれはね」
二人もアンのことはわかっている。わかっているからこそ御愁傷様といった感じであった。
「辛いね、どうにも」
「どうにかならないの?ギルバートは」
「どうでしょうね」
ルビーは難しい顔でセドリックに答える。おっとりしたところのある彼ですらそうなのだからギルバートがどれだけ鈍いかである。
「気付かないんじゃ」
「気付いていないの彼だけだよね」
ロミオが呆れた顔で述べる。
「やっぱり」
「いえ、多分」
ここでルビーは考える目をしながら言うのだった。
「テンボとジャッキー、フランツは」
「あの三人は別だよ」
ロミオははっきりと言い切った。
「まともなものが見えないし」
「見えない、ね」
「結局あれだね」
三人のことを語ったうえでまた述べる。
「わかっていないのはギルバートだけってことだね」
「バレンタインだけれどね、そろそろ」
実はそんな季節でもある。気が着けばその日になっているのがバレンタインとホワイトデーというものである。これは一大イベントであるが中にはこれの撲滅を叫ぶ男達もいる。誰とは言わないが彼等のクラスではカムイと洪童である。この二人のマイナスの黒いオーラは何処までも強い。
「アンも決められるかしら」
「無理だと思うよ」
セドリックがここで天然の毒を吐いてきた。
「ギルバートが相手だから」
「やれやれね」
ルビーはその言葉を聞いてぼやく。
「困ったわね、これまた」
「それよりもさ」
ロミオが話を戻してきた。
「そろそろじゃないかな」
「んっ!?」
ルビーはそれを受けて罠の方を見る。見れば何か黒くて大きいものが罠の方にやって来ていた。
「来たよ」
セドリックが一転して真剣な声でロミオとルビーに語る。
「遂にだね」
「そうだね」
ロミオもセドリックと同じ顔になっていた。
「いよいよ」
「そうね」
しかしルビーは暢気なものだった。平気な顔でその黒いものを見ていた。
「さて、何かしら」
「だから恐竜だって」
ロミオが彼女に対して言う。
「さっきから言ってるじゃないか」
「しかもティラノザウルスだよ」
実はそう断定はしていない。二人が勝手に思っているだけだったりするのだ。
「全く。さっきから言ってるのに」
「だと面白いわね」
しかしルビーの言葉も調子も変わらない。楽しそうに笑っているだけである。
「鬼が出るか蛇が出るかね」
「まあいいさ」
「とにかくこれで」
罠の中に鶏肉が置かれている。恐竜なら間違いなくかかるレベルである。そう、恐竜ならだ。ルビーは余裕のある顔で罠を見ながらことの成り行きを見守っていたのであった。
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