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第四十話 一輪の花その二
「この白いお花って」
「そうね」
 彼女は姉の言葉にこくりと頷いてきた。
「花言葉はよくわからないけれど」
「ねえ明香」
 彰子はあらためて妹に声をかけてきた。
「何?姉さん」
「このお花もっとないかしら」
 妹の方を振り向いて声をかけてきた。
「白いオカザクラが?」
「ええ、もっとね」
 今度はにこりと笑っての言葉であった。
「もっとあったらいいんだけれど」
「それはちょっと」
 しかし明香はそれには難しい色を微かではあるが姉に見せてみた。
「何かあるの?」
「だからオカザクラは普通は淡いピンクだから」
「ないの」
「ええ。こうしてある方が不思議なの」
「そう」
 彰子はそれを聞いて残念な顔になった。
「そうなんだ」
「このお花はどうするの?」
 明香はまた姉に問うてきた。
「どうって?」
「摘むの?それとも」
「いいえ」
 だがそれには首を横に振る彰子であった。
「摘み取ったらそれで枯れるでしょ。お花が枯れるのって嫌だから」
「そうなの」
「それに」
 彰子はさらに言葉を続ける。
「それに?」
「皆が見られないじゃない」
「皆が」
 明香は姉のその言葉に目をはっとさせた。
「そうでしょ?私だけがこのお花を見るのって」
「ええ、その通りね」
 次の言葉でにこりと笑った。笑いながら頷く。
「わかったわ。それじゃあこのお花はこのままにしておきましょう」
「ええ」
 彰子はまた頷く。これで話は決まった。
 だがそれでも彰子はまだ残念そうであった。明香もそれに気付いていた。
 それで姉に声をかける。俯き気味の彼女にそっと囁いてきた。
「姉さん」
「何?」
「お花屋さん行かない?」
 そう姉に声をかける。
「お花屋さんで白いお花買わない」
「お花を?」
「ええ。どうかしら」
 そう姉に問い掛ける。
「ううん」
 彰子はその言葉に顔を上げる。そのうえで考える顔を見せてきた。
「いいわね、それって」
「そうよね。だから」
 明香はまた姉に述べる。またここで囁く。
「行きましょう」
「ええ、わかったわ」
 彰子はあらためて頷く。そしてそのまま二人で花屋に向かうのであった。
 商店街の花屋だ。そこに行くと何故かロミオがいた。
「いらっしゃいって・・・・・・あれ」
「ロミオ君」
 彰子が彼に気付く。それで声をかける。
「どうしてここに」
「ああ、アルバイトなんだ」
 彼はそう述べてきた。
「今度はここでね」
「そうだったの」
「これでかなり楽しいよ」
 屈託のない顔でこう述べてきた。
「綺麗なお花がいつも見られるしね」
「何かそれっていいわね」
 彰子もその言葉を聞いてにこりと笑ってきた。
「お花が一杯って」
「うん。それでさ」
 ロミオはあらためて彰子に問う。
「何を買いに来たのかな」
「あっ、そうそう」
 言われてそれを思い出す。
「白いお花あるかしら」
「白いお花?」
「ええ、そうなのよ」
 ロミオに対してにこりと笑って言う。彰子のその顔も実に明るいものであった。
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