第四十話 一輪の花その一
一輪の花
あの白い花、それを見たことは彰子にとっては忘れられないものになった。ふと気がつくとその花のことを考えてしまう、そんな花であった。
「困ってるのよ」
困っているとはいっても楽しげな様子で明香に語る。
「どうしたものかしら」
「姉さん」
二人は今放課後に学校の喫茶店にいた。そこでコーヒーを楽しんでいる。
「白い花よね」
「うん」
明香に答える。
「そうだけれど」
「何処にあったの?」
明香はあらためてその花の場所を問う。
「よかったら教えて」
「道に咲いていたの」
「道に」
「うん。白くてね。一輪だけね」
そう妹に語る。語りながらもその花を心の中で見ていた。
「綺麗だったわよ」
「そうなの」
「また、見たいわ」
彰子は思い浮かべる顔で述べる。
「あの花が」
「見てどうするの?」
「どうするって言われると」
彰子は妹のその言葉には首を傾げてわからないといった顔を見せてきた。
「特に考えはないの」
「そう」
「ええ、その花もね」
そのうえでまた明香に述べる。
「どの花かわからないし」
「わからないの」
彰子の返事は今一つ要領を得ないものであった。結局わかっているのは白い花で道に咲くようなものであるということだけであった。
「うん。道に咲くっていうのが」
「それでどうするの?」
明香は姉に問うた。問いながらコーヒーを一口含む。
「探すの?」
「探そうかな」
首を左に傾げて言う。
「そのお花」
「そう、まずは探すのね」
「うん」
また妹に答える。
「そのつもり」
「わかったわ」
姉の言葉を聞いて何かを決めたような顔になった。
「それじゃあ姉さん」
「何?」
「私決めたわ」
彰子の顔を見て言う。
「一緒に探そう。その花を」
「いいの?」
「ええ、それでいいわ」
姉の顔を見ての言葉であった。いつもの表情が見えない顔であるがそれでも姉のことを想っているのは事実であった。それがわかる顔であった。
「それに一人より二人の方がいいわよね」
明香はまた言う。
「探すとなると」
「有り難う」
明香のその言葉ににこりとした笑みを浮かべる。その顔で妹を見ていた。
「それじゃあね。明香」
その顔で明香を見て述べる。
「そのお花を見たのは」
「ええ」
早速捜索がはじまった。と言っても道はわかっているのですぐにその白い花の前にやって来たのであった。
「この花よ」
白い花を指差して明香に言う。
「この白い花」
「これなのね」
明香はその花を見て述べる。
「これはオカザクラね」
「オカザクラ?」
「ええ、オカザクラよ」
そう姉に告げる。
「けれど。珍しいわ」
「珍しい?」
「ええ。オカザクラって普通は淡いピンクだから」
だからサクラと言われているのである。宇宙に出てから日本人が出会ったサクラの一つである。二人は今その花を見ていたのだ。
「白はあったかしら」
「白いオカザクラ」
「そんなのがあったなんて」
明香はまた言った。
「思わなかったわ」
「そうだったの」
「ええ。まさか本当にあるなんて」
「何か見つけられただけでもラッキーだったのね」
彰子はそれを聞いてあらためて述べる。
小説・詩ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。