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第五話 好きだから仕方ないその一
                 好きだから仕方がない
「アンネットは何処!?」
 トルコから来たルシエン=バリケシールは今日もアンネット、アンネットである。実は彼女と同じクラスだがそれでもいつもアンネットと一緒にいたがるのである。黒い波がかった髪に琥珀色の瞳、そして程良く黒く整った美男子といっていい顔だがそれを見事なまでに活かしていなかった。
 それは席替えの時でも同じである。
「俺アンネットの隣がいい!」
「ってまだはじまってもいねえだろうが」
 立ち上がって叫ぶ彼にクラスメイトが突っ込みを入れる。
「はじまる前に言っておくんだよ」
 彼はそう反論する。そして結局アンネットの隣の席をゲットするのである。
「よし、やっぱり隣同士でなくちゃな」
「やれやれ」
「あいつにも困ったものだぜ」
「アンネットも大変ね」
 クラスメイト達はそんな彼を見て呆れ顔である。だが当のアンネットはどうかというと。
「ねえアンネットちゃん」
 今日はクラスの女の子達の何人かで人口スキー場に出てスノーボードをやっていた。そこにアンネットも参加しているのである。
「何?」
 雪の多い惑星の多いフィンランド出身だけあって見事に滑るアンネットに彰子が声をかけてきた。彼女はそれを受けて一時滑るのを止めて彰子の方を振り向いた。彼女達は同じクラスなのだ。
「ルシエン君のことだけど」
「ああ、彼のこと?」
「うん、どう思ってるの?」
「それを聞きたいのかしら」
 アンネットはにこりと笑って彰子達に顔を向けてきた。
「うん、どう思ってるの?」
「さあ」
 だがそれには答えはせずに悪戯っぽく笑うだけであった。
「さあって」
「それは秘密よ」
「秘密って?」
「あんたもかなりの悪女ね」
 彰子はわからなかったが蝉玉やエイミー達にはわかった。ここはやはり知識や経験、それに勘がものを言った。どれも彰子にはないものである。
「まあ誰にも迷惑はかけてないからいいけれどね」
「一人を除いてね」
「その一人にしてもね。本人は迷惑していないわよね」
「何か話がよくわからないけれど」
 彰子は蝉玉とエイミーの会話にきょとんとした顔をしていた。
「どういうことなの?」
「あんたもそのうちわかるわよ」
「いや、彰子の場合」
 エイミーは首を少し傾げさせた。
「ずっとわからないままかも」
「?」
 首を傾げたままの彰子。だがそれで話は終わり女の子達はスノーボードに戻った。そこで渦中の人物が姿を現わしてきた。
「アンネット!」
 ルシエンである。彼もスノーボードに乗ってやって来たのである。格好は黒いラフな服で決めていてゴーグルが日の光に輝いている。その波がかった髪の毛が風になびいて実に格好いい。
「一緒に滑らないか!?来たぜ!」
「あら、ルシエン」
 アンネットはそんな彼を見てにこやかに笑う。
「どうしたの?そんなに急いで」
「急いだもどうしたもないよ!」
 彼は急な斜面を滑り降りながらアンネットに向かって来る。
「折角こうして来たんだ!一緒に!」
「だったら追いついてみて」
 悪戯っぽく笑うと自分も滑りだす。
「そうしたら考えてあげるわ」
「よし!それなら!」
 ルシエンの滑りに気合が篭もった。スピードが速まる。

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