第二百六十一話 ぶつかってしまいその六
「一人称が決まったじゃない」
「あ、僕に」
「実際にルシエンってその方が合ってるわよ」
「そうか。僕で」
「出たでしょ」
「言われてみれば」
本人もここで気付いた。
「そうだね」
「まあ今はどっちも。他の喋り方もやってみて」
「そうしてると」
「自然にそうなるから」
自分に合った喋り方になるというのだ。
「だから悩むこともないわ」
「そう。じゃあ」
「喋ることね」
まずはそれだというのだ。
「そのうち身に着くから」
「だからなんだ」
「そう。このまま喋っていきましょう」
アンネットはにこやかに笑ってルシエンに話す。
「そうしましょう」6
「そうだね。それじゃあ」
「そういうことでね。それでね」
「それで?」
「お花買ってくれるのよね」
話がそこに戻った。花にだ。
「そうしてくれるのよね」
「ああ。それじゃあな」
「有り難う」
また礼を言うアンネットだった。
「お部屋に飾らせてもらうわ」
「そうしてよ。是非ね」
「小さいひまわりね。思えばね」
そうしたひまわりについてもだ。アンネットは笑顔で述べる。
「ひまわりって本来は大きいものじゃない」
「そうそう。元々の種類は」
「それでも。小さい種類も出て来て」
「部屋に飾れるようになった」
「凄いことよね」
そのことをだ。笑顔で感謝しているのだった。
「やっぱり有り難いわ」
「じゃあ有り難いから」
「お部屋に飾ってルシエンと」
「僕と?」
「品種改良してくれた人と」
花を栽培する農家がそうしたのだ。小さなひまわりを生み出したのだ。
「それと神様にね。感謝するわ」
「アンネットは確か」
「ロシア正教よ」
彼女の宗教はそれだった。
「他には真言宗も信仰してるけれどね」
「ああ、仏教徒でもあったんだ」
連合特有のだ。複数の宗教を同時に信仰することをだ。彼女もしているのだ。
「それじゃあ仏教の方は」
「大日如来を信仰してるわ」
「お日様だね」
「そう。ひまわりと一緒よ」
太陽だからだ。そうなるのだった。
「そうしてるわ」
「成程な。そうか」
「そうよ。そうしてるの」
そんな話をしてだった。二人は。
ルシエンが花を買いそのうえでだ。その花をアンネットの部屋に郵送してだ。
それが終わった時にだ。もういい時間だった。
アンネットの方からだ。ルシエンに言ってきた。
「じゃあ。遂にね」
「居酒屋だよな」
「飲むわよ」
実に楽しげにだ。言う彼女だった。
「もう溺れる位にね」
「溺れる位か」
「そう、飲むわよ」
とにかくだ。飲むというのだ。
「何を飲むかは」
「ウォッカ?」
「ウォッカもいいけれど」
それとは別のものだという口調だった。
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