第三十八話 恐怖の生活指導その四
「舐めろ」
「何だ、舐めるだけか」
「それの何処が怖いのよ」
「わかっていないな」
先生はそんな彼等に対して言う。酷薄な笑みを漂わせていた。この山羊こそがその恐怖であったのだ。だが彼はまだそれを隠している。
「ならばそれでいい」
「それでって」
「一体何が・・・・・・うっ」
ジャッキーの方が先に舐められた。
「どうだい?」
「くすぐったい」
そうテンボに答える。
「それだけか?」
「ええ、それだけ」
「何だ」
「けれど何か呼吸が」
舐められてくすぐったい。すると次第にそれが苦しくなってくる。
「笑ってるばかちだからこれって」
「その通りだ」
ここで先生は言う。
「舐められているうちに苦しくなる。そして」
「そして」
先生の言葉に応える。
「そのうち足の皮がめくれて血が出る。山羊はその血の鉄分も舐めていく」
「ちょ、ちょっと何よそれ」
ジャッキーはそれを聞いて思わず声をあげる。
「滅茶苦茶怖いじゃない」
「元はエウロパの拷問だ」
「あいつ等ね」
エウロパという名前を聞いて顔を顰めさせる。テンボも同じだ。
「これで何があっても吐かせるのだ」
「何でそんな恐ろしい体罰を」
「他にもあるぞ」
風紀部員達はジャッキーに答える。
「他にもって」
「鼠を腹の上に置いて蓋をする。それから上から熱する」
「それでどうなるんだ?」
「鼠が熱さから逃れる為に腹を食い破り」
「うちの学校は何処の秘密警察だ?」
「勿論そこまではしない」
先生は述べる。
「安心しろ」
「実際にそこまでやったら怖いわよ!」
ジャッキーがそう返す。
「何よそれ、まんま悪の組織じゃない!」
「そういう設定だ、当然だ」
先生の言葉は教師のものではなかった。
「わかるな」
「わからないわよ!」
「おい、このままどうなるんだよ!」
テンボも叫ぶ。
「だから足の皮がめくれてな。そのまま」
「そうなったら探偵できないだろうが!」
彼はそれを聞いていよいよ焦りだした。
「歩けなかったら探偵稼業もよ」
「では反省するか?」
先生は彼等に問うてきた。
「いいな」
「わ、わかった」
テンボがそれに頷く。
「何でも言うこと聞くから」
「あたしも」
実際に今舐められているジャッキーにとっては死活問題である。彼女はそれに必死で応える。そろそろ足の裏が痛くなりだしてきたからだ。山羊の舌は結構ザラザラしているのだ。
「だから山羊は」
「よし、わかった」
先生は二人の言葉を聞いて頷く。
「では止めさせろ」
「はい」
こうして山羊は離された、それから先生に言われるのであった。
「掃除だ」
「はあ」
罰則であった。どうやらこれを吐き出させるつもりであったようである。
「いいな」
「わかりました。それじゃあ」
こうして二人は罰則の掃除をやらされることになった。その範囲はかなり広くやたらと大変なものであった。二人はぶつくさ言いながらそれをやっている。
「やれやれだぜ」
テンボは箒で庭を掃除している。
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