第三十八話 恐怖の生活指導その一
恐怖の生活指導
テンボとジャッキーは洪童の言葉に引っ掛かり生活指導のロシュフォール先生のところに向かっていた。この先生は髭を綺麗に切り揃えた一見ダンディな紳士だがその素顔は鬼である。
日本軍仕込みという根も葉もない噂がある。彼はシュメール人でありそもそも軍にいたことはない。それでも奇妙な噂がまかり通っていたのである。
その彼のところに向かう二人であったがかなり意気揚々としていた。
「さて、ジャッキー」
「ええ、テンボ」
彼等は学校の廊下を凱旋気分で歩きながら話をしていた。
「いよいよだな」
「そうね、いよいよね」
二人は笑顔で言い合う。
「俺達の推理でロシュフォール先生の悩みを解決だ」
「何だかわからないけれどやるわよ」
何も考えずにロシュフォール先生のいる数学の職員室に向かう。そこに入ると先生が厳しい顔で生徒に恐ろしい生活指導を行っていた。
「喝!」
生徒を座禅させその肩を精神注入棒で叩いている。
「気合が入っておらんぞ!」
「はっ!」
その生徒は何故かそれに応えている。それでしごきを受けていた。
「学校にボトルを持って来るとは何事か!恥を知れ!」
バイクで来ようが馬で来ようが構わずどんな服装でも構わない。あげくには大暴れしても平気な学校であるがそれでも校則はある。幾ら何でも校内での飲酒は御法度なのである。
「罰として座禅の後で反省文だ!よいな!」
「申し訳ありませんでした!」
悪事を働いた生徒はそう応える。何か色々と混じった生徒指導であった。
「あっ、先生」
よお、といった感じでテンボが彼に声をかけた。
「どうもです」
「何だ、御前等」
先生はジロリとした顔で二人を見てきた。
「呼んだ覚えはないぞ」
「何言ってるんですか」
「あたし達を呼んだって聞いて」
「御前等をか」
先生は二人の言葉を聞いて目を顰めさせた。そのうえでまた述べた。
「ええ、何なんですか?」
「事件の解決ですか?」
「事件の解決、か」
先生はその言葉に何かを思い出したようであった。
「そういえば」
「はい、そういえば」
「何ですか?」
「御前等ちょっと座れ」
先生は二人にこう声をかけてきた。
「!?そこにですか?」
「そうだ」
先生は答える。
「事件の解決だ、いいな」
「わかりました」
「それじゃあ」
二人は何も言わずにそこに座る。するとここで先生は指をパチン、と鳴らしてきた。すると何処からともなく白い詰襟の超長ランとズボンの一団が姿を現わしてきた。
「御呼びですか、先生」
「遂に捕まった」
先生は後ろに控える男達にそう言ってきた。
「大物二人がな」
「おおっ」
「確かに」
白い制服の男達はテンボとジャッキーの姿を認めて思わず声をあげた。
「遂にですか」
「そうだ、連れて行け」
先生は彼等に命令を下す。
「いいな」
「了解」
「畏まりました。それでは」
彼等はすぐに二人を捕らえる。両手を後ろから羽交い絞めにして連行して行く。
「こっちだ」
「大人しくついて来い」
「おい、ちょっと待てよ」
アシスタントが来たと思っていた二人は羽交い絞めにされてようやく声をあげた。
「風紀部が何の用だよ!」
「あたし達が何をしたっていうのよ!」
実は彼等は八条学園高等部第十三風紀部である。ロシュフォール先生に率いられた彼等はその恐ろしい隠密行動と恐怖の制裁により学園の白い鬼神と恐れられているのである。なお先生は彼等を率いていることから超鬼神という何の捻りもセンスもない通り名を貰っている。
「何をしただと」
「どの口が言うか」
しかし彼等は二人に対して言う。
「御前等を捕らえる時を待っていたのだ」
「推理研究会の人間最終兵器」
それが二人の仇名の一つである。いい仇名ではない。
「遂に年貢の納め時だ」
「観念するんだな」
「ちょっと先生」
ジャッキーが先生に対して言う。
「これどういうことなんですか。一体」
「詳しい話は生徒指導室だ」
それが先生の返事であった。
「いいな」
「はっ」
「了解しました」
制服の学生達はそれに頷く。こうして彼等は二人を連行したのであった。
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