第三十七話 華の四姉妹その四
「そんなので絵が描けるの?」
「描けない?」
「描けないわよ」
そう二人に反論する。
「滅茶苦茶な絵になるわよ」
「酔えば酔う程ってわけにはいかないか」
フックはそれを聞いて言った。
「まあ俺もガールハントは酔ってちゃできないしな」
「というか今更だけれどね」
蝉玉がそんな彼等の話を聞きながら呟く。
「未成年は結構お酒制限されていたような」
「そうだったっけ」
彼女の横でバーボンを飲むスターリングがそれに応えて言う。
「初耳だよ」
「まあ国によって違うけれど」
「少なくとも俺の国じゃそれはなかったな」
ルシエンは蝉玉に答える。彼は缶のカクテルを飲んでいる。カロリーは少なめだ。
「トルコってムスリムでしょ?確か」
「あまり関係ないな」
そう蝉玉に返す。
「ケマル=アタチュルクの頃からな」
トルコ建国の父と言われている。群を抜いた指導力とカリスマ、政治力により第一次世界大戦で敗北し解体の危機にあったトルコを救いその指導者となった男だ。トルコを建て直し近代化を達成した。彼なくしてこの時代のトルコもなかったと言われている。この時代のトルコにおいても国父として敬愛を集めている。
「そうなの」
「そうなんだ。だからな」
スクリュードライバーを飲む。飲みながら話をする。
「特に問題はないんだ」
「あんたはムスリムだったっけ」
「そういえばそうだな」
返答にも真剣味がない。サハラでこんな姿を見られれば怒鳴りつけられるどころでは済まないがここは連合だから平気である。
「まあ気にするな」
「やれやれ」
呆れながらも一緒に飲む。そうして飲んでいると遂に最後の一人が戻って来たのである。
「只今」
「あっ」
エイミーはその声を聞いて声をあげる。遂に最後の一人メグが帰って来た。気品のある顔立ちで金色がかった茶色の髪の大人の美女であった。
「メグお姉ちゃんよ」
「遂に最後の一人か!」
カムイはそれを聞いて喜びの声をあげる。
「遂にか!」
「あの、カムイ」
アンネットが彼に突っ込みを入れる。
「何でそんなに熱中しているのよ」
「酔ってるな」
マチアが彼を見て言う。既に彼の足元には缶ビールが数個転がっている。他にも色々と飲んでいる。顔はもう真っ赤になっていた。
「なあ、御前の一番上の姉さんってな」
その酔った顔でエイミーに問う。
「凄いよな、気品があって」
「それはわかったから」
迷惑な顔で彼に答える。
「酔いを醒ましてね、早く」
「俺は酔ってないぞ」
酔っ払いの定番の言葉が出て来た。
「だから安心しろ」
「その台詞は何があっても信用できないわよ」
「何っ!?」
エイミーのその言葉に抗議を向けてきた。
「俺の何処が酔ってるんだ」
「わかったから。少し水でも飲んでよ」
「水か」
「ええ」
そう彼に言う。
「わかったわね」
「わからん」
「駄目だこりゃ」
カムイのその言葉を聞いて思わず言う。
「どうしたものだか」
「じゃあこれ飲んで」
アンネットが横から言ってきた。その手にはボトルがある。
「これ何だ?」
「お水よ」
凄まじい大嘘を平気で言う。
「それ飲んだら楽になるから」
「そうか。それじゃあ」
それを受け取って一気にラッパ飲みする。するとそこに崩れ落ちた。
「何飲ませたんだ?」
「ウォッカ」
そうマチアに答える。
「流石に効くわね」
「ええよ、アルコール度九六パーセント!?」
マチアがボトルに書かれているアルコール度を見て声をあげる。
「何だ、こりゃ」
「凄いでしょ、我が国の切り札よ」
「ウォッカか」
「火が点くから」
アンネットはそのウォッカを平気な顔で飲みながらマチアに語る。
「ちょっとやそっとじゃ飲んで倒れないのはいないわ」
「凄い酒だな、全く」
マルティもそれを見て驚きを隠せない。
「まあこっちの酒も結構だがな」
彼はそう言いながらウォッカと同じような無色透明の酒を飲んでいる。それをアンネットにも勧めてきた。
「どうだい、これも」
「何、それ」
「ラクさ」
そう答えてきた。
「ウォッカ程じゃないがこれもかなりな」
「凄いの」
「凄いぜ。飲むかい?」
「ええ。ストレートでね」
流石にアンネットは強い。それを飲んでも平気な様子であった。
「あら、いけるわね」
「やっぱりストレートだよな」
マルティも明るい顔で凶悪な酒を飲んでいる。ラクのアルコール度は四五度である。ウォッカが桁外れなだけでやはり相当なアルコール度である。
「酒はな」
「そうよね、やっぱり」
「皆楽しそうね」
メグはそんな彼等を見て言ってきた。
「ねえエイミー」
そして妹に声をかける。
「私も後でいいかしら」
「ええ、他のお姉ちゃん達も呼んで」
「わかったわ。二人共自分達の部屋ね」
ベスの部屋からピアノの音が聞こえるのを確かめてから答える。それを聞いてすぐにわかることであった。
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