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第二百五十二話 河童その三
「十五匹はいるわね」
「多いね」
「ええ、こんなに出て来るなんて」
 思わなかったというのだ。
「ちょっとね」
「つまりここの池って」
「村だったみたいね」
 ナンシーはそれだと言った。
「河童のね」
「河童の村だったんだ」
「河童にだって村はあるでしょ」
 ナンシーはこう言ってだった。そのうえでだ。
 このだ。日本の小説を話に出すのだった。
「ほら、芥川龍之介の小説であるじゃない」
「ああ、河童?」
「そう、河童」
 その小説のタイトルを話すのだった。
「あの作品って河童の世界書いてるじゃない」
「ああ、そういう作品だったの」
「あれっ、読んでないの?」
「芥川の小説で末期の作品はね」
 どうかとだ。ジョルジュは話すのだった。
「読んでないんだ」
「そうだったの」
「あれって芥川の末期の作品だよね」
「もう自殺する直前のね」
 芥川は自殺している。精神が崩壊していたと言われ麻薬に溺れていたという説もある。睡眠薬を常用していたのは事実である。
「その直前の作品よ」
「その頃の芥川の作品はね」
「駄目なのね」
「読まないようにしているんだ」
 そうだというのだ。
「だから。精神的に崩壊しているからね」
「確かに作品にそれが出てるわよね」
「あの頃の芥川っておかしいでしょ」
 ジョルジュはそのものずばりで話した。
「明らかにね」
「それはそうだけれどね」
「だから。ちょっとね」
 それでだというジョルジュだった。
「あの作品はね」
「成程。それでなのね」
「うん、だからその作品は読んでないんだ」
 はっきりとナンシーに話した。
「河童だけじゃなくて芥川の末期の作品はね」
「確かに。読んでいたらね」
「あれだよね。やっぱり」
「おかしいと思うわ」
 ナンシーも言うのだった。その時の芥川はだ。
「あれってね」
「とりあえず点鬼籍を読んで」
 所謂閻魔帳のことである。中国では霊を鬼と呼ぶ。それでこの表現になるのだ。芥川は和漢洋とあらゆる国の教養も備えていたのである。
「ついていけないって思ってね」
「賢明って言えば賢明ね」
「賢明なんだ」
「だって。確かにおかしいから」
 それはナンシーも否定しなかった。芥川の末期の精神状況がだ。
「私最後の作品まで読んだけれど」
「ええと、最後の作品って」
「或阿呆の一生とか歯車とか」
 遺稿として知られている作品である。
「そうした作品よ」
「どう?読んでみて」
「感想ね」
「うん、その感想」
「きてたわね」
 これがまさにだ。感想だった。
「末期症状というか何というか」
「おかしかったんだね」
「末期の芥川ってね」
 ナンシーはその感想を詳しく話しだした。その芥川の作品についてだ。
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