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第三十七話 華の四姉妹その三
「何かあったのかしら」
「ほら、この前の」
 彼はそれに応えて述べる。
「ロシュフォール先生にやったあれで」
「ああ、あれね」
 エイミーはその言葉を聞いて納得したように頷く。
「それで罰ゲーム喰らってるのね」
「そういうこと。だから来られないんだ」
「全くあの二人は」
 エイミーはそれを聞いたうえでふう、と溜息をつく。
「困ったことね」
「その二人以外は全員参加よ」
「全員なのね」
 蝉玉の言葉に応える。
「そう、全員」
「それにしても不思議って言えば不思議ね」
 ここでエイミーはまた言う。
「何が?」
「いえね」
 そして言葉を続けさせる。
「いつも皆アパートに簡単に入ってるけれど」
「細かいことは気にしなくてもいいよ」
 しかしそれはスターリングのこの言葉で終わった。
「そうかしら」
「そうだよ。だってさ」
 彼は言う。
「限られた人間しか入られないって面白くないじゃない」
「そうね」 
 エイミーもそれに頷く。
「確かに」
「皆いてのクラスだしね」
 蝉玉も言う。彼女も同じ意見であった。
「馬鹿二人は仕方ないか」
「そうそう」
 蝉玉は今度はエイミーの言葉に頷く。
「全く。何考えてるのやら」
 そんなことを言いながらエイミーの家に酒とつまみを持って集まる。非常に奇怪なことだが全員四人暮らしの家の中に入ったのであった。
 皆そこであれこれ話をはじめる。暫くしてエイミーの姉達、今回の話の主役が戻ってきたのであった。
「あら」
 最初に戻って来たのはベスであった。ライトブラウンの髪の優雅でおしとやかな感じの美人であった。八条大学では音楽部に所属している。ピアノのコンクールで何度も入賞している期待の華である。
「エイミー、皆来てたの」
「別にいいよね」
 そう姉に問い返す。
「皆いても」
「ええ、私はいいけれど」
「どうもお姉さん」
「お邪魔してます」
 クラスメイト達はそう彼女に挨拶をする。
「ええ。はじめまして」
 ベスは彼等にこりと挨拶をする。その顔も実に気品がある。
「ベスです。エイミーの三番目の姉です」
「はいっ」
「ねえエイミー」
 蝉玉がここでエイミーに囁きかける。
「凄い美人さんよね、やっぱり」
「ええ。そうでしょ」
 にこりと笑ってその言葉に応える。
「けれど。やっぱりねえ」
「彼氏の話がないのが?」
「何でかしら」
「じゃあ私はこれで」
 ベスは気品ある姿でそっとエイミー達の前から姿を消す。
「ピアノの練習がありますので」
「やっぱり凄いわね」
 アンネットがその言葉を聞いて述べる。
「ピアノの練習って。やっぱり天才はさらに能力を磨くってやつね」
「そうだな」
 マチアがそれに同意して頷く。
「八条大学音楽部きってのピアノ。一日や二日でできはしないか」
「そうよね。やっぱり凄いわ」
「ピアノか」
 ルシエンがそれを聞いて妙な反応を見せてきた。
「じゃあ俺も」
「ちょっと待って」
 アンネットは彼のその妙な反応に気付いて声をかける。
「貴方若しかして」
「アンネット、ピアノは好きか?」
 真顔で彼女に問う。
「立ったら俺は」
「ちょっと、そこまでしなくていいわよ」
 慌ててルシエンに声をかける。結構焦っている様子である。
「いいわね。だから」
「あ、ああ」
 何かよくわからないがそれに頷くことにした。
「わかった。それじゃあ」
「ええ。それは本当にいいからね」
 くどいまでに念を押してきた。やはり焦りがある。
「本当に」
「おい、アンネット」
 そんな彼女を見てマチアが彼女に声を囁く。
「何でまたそんなに必死に止めるんだ?」
「いえ、実はね」
 アンネットは困った顔でそれに応える。それには理由があった。
「彼、音楽の方は」
「下手なのか?」
「下手っていうか何かね」
 困った顔で述べる。その顔は変わりはしない。それだけでおおよそこのことがわかるというのが人の顔というものは実に不思議である。
「音楽になると人が変わるのよ」
「そんなにか」
「ええ。だからね」
 彼女は述べる。
「ルシエンにはあんまり」
「そうか」
「そういうこと」
 そんな話をしていると二人目がやって来た。今度帰って来たのは二番目のジョーであった。
「おっ」
 彼女は皆が家にいるのを見て元気のいい声をかけてきた。
「何か今日は賑やかだな」
「皆来てるのよ」
「ベスもいるな」
 ここでピアノの音を聞いて呟く。顔を上げて元気な様子である。
「いい感じだな」
「そうでしょ?だからね」
「ちょっと待ってね」
 にこりと笑って末の妹に返す。
「まずはレポート済ませないといけないから」
「あっ、それあったのね」
 ジョーは文学部の学生だ。将来は学校の先生か作家になりたいと考えているのだ。だからこうしたレポートをしない筈がない。実際に今かなり乗り気なようであった。
「そうよ。だから」
「わかったわ。それじゃあ」
「それが終わってからね」
 ジョーはそのまま自分の部屋に閉じこもる。男達、とりわけジョルジュやフックといった面々はそれを見て非常に詰まらなそうにしていた。
「何だよ、レポートって」
「酒でも飲みながら書けないか?」
「あんた達いつもそんなのやってるの」
 エイミーがそれを聞いて顔を顰めさせる。
「いや、たまに」
「いつもじゃないぞ」
「やってるのね」
 それを聞いてかなり呆れ顔になっている。エイミーはそんな彼等の態度に納得していないようであった。それは態度でわかる。
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