第二百五十一話 胡瓜その一
胡瓜
池のほとりに狼とゴリラを連れてだ。ナンシーとジョルジュは来た。そこでだった。
ナンシーがだ。ジョルジュに言うのだった。周りは夜に入ろうとしている。その急激に暗さを増していく世界の中で彼に顔を向けている。
後ろの空はもう青から夜の帳に移ろうとしている。星も輝きだしている。木々も校舎もその色をなくし黒の幕でその身を包もうとしている。
その中でだ。彼女は言うのだった。
「河童だからね」
「河童っていったらやっぱり」
「胡瓜よね」
それだというのである。
「胡瓜が好きだったわよね」
「そうだね。河童っていったらね」
「それを出してね」
「誘い出すんだね」
「そうしましょう」
これが彼女の提案だった。そしてだ。
今着ている上着の胸ポケットからだ。大きなダンボールの箱を出してきた。そこに。
「この中にあるから」
「ダンボール単位なんだ」
「そうよ。こうした場合は思い切らないとね」
「河童の好物を出してそうしてね」
「河童をおびき出すのよ」
まさにだ。釣り餌だというのだ。
「これでね」
「ううん、何か定番だね」
「確かに定番ね」
それは否定しないナンシーだった。
「河童に胡瓜はね」
「そうだね。けれどなんだね」
「やっぱりこれでしょ」
また言うのだった。
「胡瓜が一番だからね」
「うん。ただね」
「ただ?」
「ゴリラに食べられないようにしよう」
彼等が今連れているだ。そのゴリラにだともいうのだ。
「ゴリラって胡瓜も食べそうだしね」
「完全なベジタリアンだしね」
「そうだよね。だからね」
それでだというのだ。ジョルジュもゴリラの菜食主義は知っているのだ。
「それは気をつけてね」
「ゴリラは賢くて大人しいけれど」
またゴリラのその性質が話される。
「それでもつまみ食いとかあるよね」
「あるわね、確かに」
「だったらそれはね」
「注意しないと駄目ね」
「そうそう。それで何か考えてる?」
「考えてるわ」
即答だった。ナンシーは話した。
「ちゃんとね」
「そうなんだ。もう考えてるんだ」
「そう。実はこの子だけれど」
そのゴリラを見ながらだ。ナンシーは話すのだった。見ればその場に座ってだ。そのうえで静かにしている。実に大人しく思慮深げな感じだ。
「ある程度だけれど人間の言葉わかるの」
「そこまで賢いんだ」
「そう、だからね」
それでだというのである。
「ちゃんと駄目って言ったら」
「それで大丈夫なんだ」
「そう。こっちの子もね」
今度は狼を見ながらジョルジュに話した。
「この子も大丈夫だから」
「ちゃんと駄目って言ったら聞いてくれるの」
「そう。賢い子だから」
狼の方もだというのだ。賢いというのである。
「ちゃんと聞いてくれるの」
「何か有り難いね」
「そうでしょ。有り難いでしょ」
「うん、この場合はね」
そうだとだ。ジョルジュも話す。
小説・詩ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。