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第二百四十九話 ナンシーの不覚その九
「それはね」
「そういうことでね。それじゃあね」
「ええ。じゃあちょっと本屋に行くから」
 ナンシーは笑顔でジョルジュにまた話した。
「そこで本買って来るから」
「何の本?」
「歴史の小説よ」
 そうした本だというのだ。
「ほら、百年前のエウロパのサハラ侵攻の時のね」
「ああ、あそこで負けたサハラの」
「そう、あの英雄の話なのよ」
 所謂悲劇の英雄だ。サハラの歴史では非常に多い。それだけ多くの国が滅びてだ。多くの英雄が悲劇の英雄となっているということなのだ。
「その本がいいっているからね」
「それで買うんだ」
「連合が舞台の歴史小説になると」
 それはだ。どうなるかというのだ。
「あれじゃない。戦争とかはなくて」
「アメリカンドリームな話になるよね」
「それはそれで面白いけれど」
「今は戦争の話が読みたいんだ」
「ええ。そういう話も面白そうだから」
 歴史小説に戦争はある意味つきものだ。戦争はハレになる。そのハレとそれによって歴史がどう動くのか、それを読むのも歴史小説の醍醐味なのだ。
「だから。読んでみるから」
「わかったよ。それじゃあね」
「少し行って来るわね」
 ナンシーは立ち上がって言った。
「本屋さんにね」
「そういうことでね。じゃあ僕はね」
「ジョルジュはどうするの?」
「暫くここにいるよ」
 屋上にだというのだ。彼等が今いるだ。
「空でも見てるよ」
「ロマンチストなの?」
「ははは、そう思うかな」
「若しかして違うの?」
「ここからだよいい写真が撮れるからね」
 ここでだ。ジョルジュはだ。
 普段の顔になった。カメラマン、それもあまりよくない評判のだ。
「だからちょっとね」
「上から盗撮するの?」
「ほら、風がひらりとかね」
 ジョルジュは早速下心を露わにさせて話す。
「そういうのがあるから」
「そういうのばかり狙ってたら何時かぶん殴られるわよ」
「女の子に?」
「そうよ。女の子の彼氏とかね」
 殴りそうな候補が結構いるのだ。これはジョルジュにとってはいいことではない。しかしそのことにへこたれるようなジョルジュでもないのである。
 それでだ。彼は果敢な調子で言うのであった。
「そんなことを怖がってたら何もできないからね」
「本当にそのうち殴られるわね」
「大丈夫大丈夫」
 かくしてだった。ジョルジュは撮影の機会を窺うのだった。だがそれがだ。大変な騒ぎを引き起こしてしまうのだった。また別の騒ぎをだ。


ナンシーの不覚   完


                  2011・4・27
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