第二百四十七話 大成功その七
「迂闊だったわ」
「彰子とズデンカの相性」
「それについてよね」
「そう、実は合っていたのよ」
これが今の時点の結論だった。
「あの娘にね」
「それとね」
ここでだ。ナンシーはさらに話した。
「明香ちゃんもね」
「妹さんも聴いてると」
「アラベラと相性抜群だけれど」
「声が合っているのよ」
こちらもだ。声なのだった。
「妹さんの声ってソプラノの中では低めよね」
「確かリリコ=スピント?」
「基本はそうよね」
ソプラノで低い部類に入る声だ。その下になるとドラマティコとなる。
「彰子がリリコでね」
「妹さんはそっちで」
「だから合わないとか思ってたのに」
「これが合うなんて」
「かなり以外」
「多分ね」
ここでまた話すナンシーだった。
「ドイツオペラってイタリアオペラ程声域が限られないじゃない」
「あっ、そういえば」
ふとだ。パレアナが気付いた様に声を出した。
「あれよね。ワーグナーだけれど」
「ワーグナー?」
「そう、ワーグナー」
リヒャルト=シュトラウスと同じドイツオペラの作曲家だ。その作品はこの歌劇場においても非常によく上演されてきているのである。
「ワーグナーだとソプラノでもメゾソプラノの役歌うじゃない」
「ああ、そうね」
コゼットはパレアナのその言葉に納得した顔で頷いた。
「クンドリーとかね」
「ええ、それもだし」
パルジファルのヒロイン的一にいる役だ。神聖さと妖美さを併せ持つ非常に不思議な女である。パルジファルの重要人物でもある。
「あとヴェーヌスも」
「あの役もそういえば」
「しかもヴェーヌスとエリザベートって一人で歌う場合もあるわよね」
「この前の上演そうだったわね」
「そういうの考えたらね」
パレアナは話していく。ヴェーヌスとエリザベートはタンホイザーの女性キャラである。ヴェーヌスは愛欲の女神、エリザベートは姫である。やはり正反対の位置にある。
しかしその二役をあえて一人の歌手が歌う演出もあるのだ。女性の二面性を強調しての演出である。予算が関わる場合もある。
「リヒャルト=シュトラウスだって」
「いけるのね」
「ええ。あまり型にはめて考えることはないのね」
パレアナはまた話した。
「ちょっと。今回はそれが過ぎたわね」
「確かに。私も」
「私もね」
コゼットとナンシーもここでそのことを自分で認めた。
「今回はミスキャストだって思ったけれど」
「それ先入観だったのね」
「正直失敗したわ」
パレアナは難しい顔で話した。
「実はいけたのね、あの配役で」
「ええ、けれど何か」
「この舞台は」
先入観が破壊されたことが余計にだった。
観客達をしてだ。二人の歌と演技を見させていた。そしてだ。
第三幕になりだ。遂に最後の場面になった。そこでは。
「いよいよだな」
「ああ、いよいよだよ」
「階段の場面だ」
「それがはじまるな」
「遂に」
そのだ。アラベラが階段を降りる場面が近付いてきていた。それにだ。
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