第三十六話 馬鹿兄貴は永遠にその二
「困ったことになっちゃってるけれど」
「ここは暫く様子を見よう」
アルフレドが言ってきた。
「まだ何もわかっていないからな」
「そうだね」
ジョンがそれに頷く。
「下手に動いたらそれが大変なことになっちゃうし」
「そうね」
ビアンカもそれに同意する。アルフレドを上手くフォローしている感じであった。こうしたところは流石に双子であるがビアンカのそれはそうしたことを考慮に入れてもかなりのものであった。
「ここはね。じっくりと見ましょう」
「あいつは?」
「どうする?」
「彼もね」
アルフレドは鋭い声で洪童についても言及してきた。
「ここは放っておこう」
「いいのか?」
「あいつ馬鹿やらないか?」
クラスメイト達はそれが不安で仕方がなかった。こうした時はいつも暴走して碌でもないことをしでかしてしまうというのがいつものパターンだからだ。
それを心配しての言葉である。しかしアルフレドはそんな彼を放っておくと言うのである。
「いいさ、今は」
「大丈夫なの?」
ジョンもそれを聞いて不安そうな顔を見せる。
「暴走したら」
「それも計算のうちさ」
彼は言う。
「というかするだろうね」
「じゃあ余計に」
「放っておいたら」
「いや、それでも」
しかしアルフレドはそれでも考えを変えようとはしない。クラスメイトの言葉にも首を縦に振りはしない。
「いいんだ、ここはね」
「兄さん」
ビアンカが兄に声をかける。
「いいのね、それで」
「ああ、いい」
答えは決まっていた。強い言葉だった。
「だからいいね皆」
そしてクラスメイト達にまた言う。
「ここは動かないで」
「わかったよ」
クラスメイト達もそれに頷く。
「じゃあそういうことで」
「それで」
方針は決まった洪童も春香も今は放置される。そうして様子を見ることになったのであった。二人だけが気付いていないという状況であったのだ。
「ガッツナックルテンペラーザラブ!」
またしても洪童は訳のわからない呪文を唱えている。
「春香にまとわりつく奴等は俺がこの手で!」
始末に悪いことに教室で喚いている。皆呆れているがそれでも見ないことにしている。
春香もまた。見られているだけである。
「ううん」
彼女は自分の教室で何かの気配を感じていた。
「どうしたの?」
「うん、何かね」
彼女のクラスメイトの言葉に応える。
「気配を感じるの」
「気配?」
「ええ」
辺りを見回りながら答える。
「何かね」
「そうかしら」
だがクラスメイト達はそれに気付きはしない。気配も感じない。
「気のせいじゃないの?」
「兄さんが何か言っているしね」
それはわかっている。
「それも気になるし」
「まあさ。あまり気にしても」
クラスメイト達は不安げな彼女に対して言う。
「落ち着かないだけだから」
「気にしない方がいいわよ」
「そうね」
「そうよ。じゃあ気晴らしにさ、今日は」
「皆でカラオケでも」
「うん」
クラスメイト達の言葉ににこりと笑って頷く。こうして彼女は気晴らしにその日の放課後はカラオケボックスへ向かった。その情報は洪童のクラスにも伝わった。
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