第三十五話 十三日の月曜日その四
「何か」
「いや、わからねえならいい」
もうこれ以上言う気もなかった。
「とにかくまだ半日か」
「はい、後は夜の世界です」
「今度は何がどうなるやら」
それが不安で不安で仕方がないだが碌なことにならないのだけはよくわかった。それはもうわかっていた。今までのことで。
「まあいい」
彼は言う。
「何があってもな」
ここで窓から火の玉が飛んできた。それが顔を直撃して頭を燃やす。
「今度は何なんだよ」
「妖術ですね」
セーラが答える。
「これは」
「ベッキーか?」
頭から水を被りながら言う。
「妖術っていうと」
「はい、これはそうですね」
セーラはそれに応えて述べる。
「大丈夫ですか?」
「火も剛速球もさっきかったからな」
彼はもう平気であった。
「これ位はな」
「そうですか」
「すいません」
ベッキーが謝るが彼は別に平気であった。
「いや、いいさ。まだこの位はな」
「そうですか」
「そういやベッキーさん」
彼はここでふと気付いた。
「あんたとラムダスさんってあれだよな。確かここの生徒じゃないんだよな」
「ええ、そうです」
ベッキーはそのことに何の迷いも淀みもなくそれに答えた。
「それがどうかしましたか」
少し見れば彼等が学校に通う年頃ではないのはわかる。二人共どう見ても二十はゆうに越えているからだ。幾つなのか詳しいことは誰にもわからない。
「いや、いいよ」
そんなことは今の洪童にとっては実に些細なことであった。そうとしか思えない程今の彼はとんでもない状況にあったからだ。そもそも教室にいきなり妖術の火の玉が来るということ自体がとんでもないことであるしだ。
「それはさ。気をつけてくれれば」
「わかりました」
ベッキーはその言葉に頷く。まだ凶事はある。それを思うと身構えずにはいられなかった。
授業中にも不幸はある。何とシャーペンがいきなり折れてそれが額に刺さるわ居眠りをしようとすれば先生のチョークが直撃するわであった。最後は自業自得だがそれでも彼にとっては不幸であった。
「やってくれるんじゃないかって」
「冗談でも言っていいことと悪いことがあるぞ」
そう妹に言い返す。
「俺に死ねってことか」
「やっぱり無理なの」
「当たり前だ。何か御前今日変だぞ」
「そうかしら」
「全く。いつもボケは俺が担当だっていうのにな」
「それはそうと兄さん」
春香は洪童に声をかける。
「早く警察呼ばないと」
「おっと、そうだ」
言われてそれを思い出す。慌てて携帯をかける。
「もしもし」
「はい、こちら連合軍第三艦隊」
「ちょっと兄さん」
いきなりミスをしてかした兄に対して声をかける。
「何で連合軍に電話がかかるのよ」
「応募はなら地連へどうぞ」
「あれっ」
洪童はその声を聞いて目を丸くさせる。そのうえで自分の携帯を見る。
「連合軍が?」
「警察でしょ、兄さん」
「そうだよな、何で間違えたんだろ」
「早く警察に電話して」
「ああ・・・・・・っておい」
「ひひひひひひひひひ!」
そこにまた通り魔が来た。そのナイフを必死にかわしながら電話をする。切り付けられながらも何とか避けて電話をするのであった。
ようやく難を逃れた。通り魔は洪童のズボンのベルトを切って下をトランクス一枚にして捕まった。彼はズボンが落ちトランクスを露わにした格好で警察と話をする。ついでに道行く人にトランクス姿を見られたしまった。
「これも不幸のうちか」
「命は助かったからよかったじゃない」
「まあな」
ようやく話を収めて家に入りながら妹と話をする。ズボンを左手で押さえている。
「死ぬところだったけれどな」
「ズボンのベルトだけだったからよかったじゃない」
「馬鹿、トランクスをまともに見られたんだぞ」
そう妹に抗議する。
「恥ずかしいぞ、これは」
「トランクスだからまだましじゃない?」
あまり見当の合っていない言葉を述べる。
「ショーツ穿いているより」
「ショーツだと完全な変態だろうが」
妹に抗議する。
「違うか?」
「まあそうね」
妹はそれに頷く。
「それはそうだけれど」
「家の中にも何かあるのか?」
洪童は憮然として述べる。
「まさかとは思うが」
「それはないんじゃないかしら」
春香はこれといって洪童の不幸を信じてはいないのか楽観視した言葉を述べた。
「流石にお家の中だと」
「あるに決まってんだろ」
しかし洪童はそう述べて妹の言葉を退ける。
「御前いきなり青空で落雷受けたり隕石受けたりしたことあるか?」
「またそれは凄いわね」
これを聞くとやはり凄いものがある。春香も呆れる。
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