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第三十四話 彼女ゲット!その六
「地獄に落ちろ!この洪童が地獄に落としてやる!」
「なあ」
 そんな彼を後ろから見るクラスメイト達は完全に呆れていた。そのうえで話をしている。
「あいつ、大丈夫か?」
「大丈夫じゃねえよな」
 皆それはわかっていた。
「どう見てもな」
「春香ちゃんも大変ね」
「全く」
 彼の心配はされずに妹の心配がされる。とはいってもクラスメイト達は彼のことも見ているのであった。考えてみれば幸せな男ではある。
 カムイはアーメンガードと二人でそのままカレー屋に入る。そこで二人して同じメニューを注文したのであった。
「チキンカレーを」
「私も同じものを」
 二人は言う。マウリア人のウェイターが注文を受ける。彼が去ってから二人はこれまたマウリア風の店の中で話をはじめた。BGMまでマウリアのものであった。
「マウリア風ですか」
「はい」
 アーメンガードはにこやかに笑って返した。
「ここはセーラ様のお店の一つでして」
「セーラの」
 彼女の家がマハラジャとは聞いていたが店を持っているとは聞いてはいない。その言葉に少し面食らってしまったのである。
「そうです。セーラ様のお店なのです」
「あいつ、店まで持っていたのか」
「御存知ありませんでした?」
「いや、全然」
 カムイは答える。
「そんなことは」
「セーラ様の御父様がご留学の際にセーラ様にお渡しされたもので」
「そうだったんですか」
 衝撃の事実だった。プレゼントの範疇ではないのはカムイもわかった。
「そうなんです。他にはですね」
「他にも」
 あると聞いて我が耳を疑うカムイであった。レストランだけでもかなりのものだというのに。
「百貨店にホテルなんかも」
「何と」
 衝撃の事実がまた明かされた。
「そしてセーラ様のお屋敷です。どうでしょうか」
「有り得ないね、何か」
 呆然としてそれに答える。
「それだけの贈り物って」
「シヴァ家からすれば些細なことなのです」
 アーメンガードは彼にそう答えた。
「ですから御気になさらずに」
「はあ」
 といっても気にならないレベルではない。カムイは何と言っていいかわからなかった。
 そこにカレーが来た。二人はそちらに顔を向ける。
「チキンカレーです」
「どうも」
「ここのカレーは本格的でして」
 アーメンガードはそうカムイに語る。
「マウリアの味そのままなのですよ」
「そういえば」
 ここで見せの中の客に気付いた。見ればマウリアの者が多い。ここはマウリアの者の為にある店なのだと今気付いたのであった。
「お店の中もマウリアにいる感じですね」
「はい。そこも考えています」
 アーメンガードが答える。
「マウリアの雰囲気をそのまま出してきましたので」
「成程」
「連合の中にあってマウリアがあるのですよ」
「それも日本の中で」
「しかもアイヌ人の貴方が」
 そう言われるとどうも神秘的な感じがするから不思議であった。アーメンガードの話術は独特のものがあった。今カムイはその中に落ちていた。
「これは運命なのですよ」
「運命ですか」
「そうです。カレーに巡り合えたのも」
「カレーですか」
「はい」
 アーメンガードの話を聞いて内心舌打ちした。自分ではなくカレーに話を持って行かれたからである。しかしそれは言葉には出さない。
「カレーです。このカレーはですね」
「何かあります?」
「三十種類のスパイスが調合されていまして」
「スパイスですか」
 つまり香辛料である。マウリア料理と言えばスパイスである。これは昔から変わらない。インドであった頃からスパイスには事欠かないしそれをふんだんに使うことがマウリア料理の基本なのである。それを今アーメンガードに教えられていた。
「そうなのです。それをお楽しみ下さい」
「じゃあ」
 スプーンを手に取る。それを口に入れると。
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