第三十四話 彼女ゲット!その四
「マウリアの曲も」
「マウリアの曲もあるんですか」
「連合のカラオケは特別でして」
連合の者達の間では老いも若きもカラオケを楽しんでいる。だから色々な曲が入っている。三百国の曲だけでなくマウリアやサハラの曲もあるのである。無論原国の言葉でである。
「色々な曲があるんですよ」
「本当ですね」
アーメンガードは曲名が書かれた本を見て言う。ボックスに必ず一冊は置かれているものをである。それを今読んでいた。
「こんな曲まで」
「揃ってるでしょ」
「はい、私の好きな曲は全部あります」
「それは何より」
「それでですね」
彼女は言ってきた。
「私も歌っていいですか?」
「ええ、勿論」
彼はにこりと笑って述べてきた。そしてマイクを差し出す。
「ささ、どうぞ」
「はい」
マイクを受け取って歌いはじめす。歌はかなり上手かった。マウリア語はわからないがそれでも歌唱力はわかった、しかしここで彼は気付いた。
そのマウリア語の発音が誰かのそれに似ているのである。それに気付いた彼はふと胸騒ぎを感じたのであった。それは急に大きくなってきた。
(何だ?)
その違和感に気付き内心眉を顰めさせた。
(これは)
「どうしたんですか?」
ここでまた後輩達が彼に声をかけてきた。
「食べ過ぎですか?」
「いや、別に」
そう彼等に返す。しかしその違和感が抑えられなくなってきていた。
「何でもねえよ」
「そうですか」
「ならいいですけれど」
「ところでな」
彼はここで後輩達に問うてきた。
「ええ。何でしょうか」
「アーメンガードさんな」
彼は彼女について問うてきた。
「姓は何ていうんだい?」
「スーリアと申します」
「へえ、スーリアさんっていうんだ」
「はい」
にこりと笑ってきた。
「宜しくお願いします」
「ええと。スーリアさんっていうと」
カムイは脳裏に何か思い出したくはないものを思い出してきた。
脳裏にあの妖術使いの顔が思い浮かぶ。そういえば。彼は今ようやく自分が何を思い出そうとしているのかわかった。わかったうえで後悔した。
「じゃあさ」
それでも一抹の望みをかけて彼女に問う。
「この学校に知り合いとかは?」
「双子の妹が」
「ふうん、双子の」
また脳裏で一つつながった。
「確かその人って」
「二年S1組です」
「やっぱりな」
カムイはそれを聞いて遂に落胆しきった。肩がガクリと落ちてその場に崩れ落ちてしまった。まるでサヨナラホームランを食らったピッチャーのようであった。
「その双子さんの名前は」
「ベッキーといいます」
アーメンガードは答える。
「それが何か」
「そうですか、やっぱり」
カムイはそれを聞いてさらに落ち込んでしまった。
「私もシヴァ家にお仕えしています」
「あれ、言いませんでしたっけ」
「先輩にも言いましたけれど」
ここで後輩達が述べてきた。
「聞いてねえよ」
カムイはそう後輩達に返した。
「そんなこと何時言ったよ」
「あれっ、言ったよなあ」
「なあ」
後輩達は顔を見合わせて言う。
「俺言いましたよ」
「俺だって」
「だから聞いてねえよ」
カムイはまた言い返す。
「何時の間にそうなったんだよ」
「けれどどうですか?」
「・・・・・・まあな」
しかしカムイもここまで来て引き下がれない。何とか気を取り直してアーメンガードに対して果敢に突撃を試みるのであった。それはマシンガンに棍棒で向かう突撃であった。
「それでですねアーメンガードさん」
「はい」
アーメンガードは清らかな笑みで彼に応える。その笑みは変わらない。
「趣味なんかあります?」
何処か見合いめいていたがそれでも構わなかった。とにかく今の事態を何とかしたいと思っていたのである。絶望的な中で。
「はい、あります」
にこりと笑って答えてきた。
「それは一体」
「黒魔術です」
その言葉を聞いてカムイの顎が外れた。呆れる程口が大きく開いてしまった。
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