第二百二十六話 アイヌ料理その一
アイヌ料理
ジュリアとロザリーがだ。教室でカムイに尋ねた。
「ところでカムイってさ」
「アイヌ料理好きだよな」
「ああ、好きだよ」
その通りだと答えるカムイだった。
「それはな」
「それでそのアイヌ料理だけれど」
「あれだよな。ラーメンとかだよな」
「ああ」
その通りだとだ。カムイは二人に対して頷いてみせた。
「それはな」
「あれよね。アイヌラーメン」
「塩であっさりとしていながらも脂ッ気のある」
「美味いだろ、あれ」
ここで幾分か笑顔になってみせるカムイだった。
「あれが北海道の味なんだよ」
「つまりアイヌのね」
「それだよな」
「そうだよ、あれこそがアイヌの味なんだよ」
そうだというのである。
「美味いんだよ、実にな」
「そうよね。美味しいよね」
「それはな」
二人もそのアイヌラーメンは食べたことがある。だから知っていた。二十世紀に札幌ラーメンと呼ばれていたものがそのアイヌラーメンなのだ。
「ただ。それって」
「アイヌ人の料理か?」
「違うのか?」
カムイは二人の今の言葉には素っ頓狂な顔になった。
「あれってアイヌ料理だろ」
「中華料理でしょ、ラーメンは」
「そうだよな」
二人はここでこのことを話す。
「どう見てもね」
「違うか?」
「そういえばそうだな」
言われてやっと気付いたカムイだった。素っ頓狂なものになった顔が普通の顔に戻った。そのうえでのやり取りであった。
「ラーメンは中華料理だよな」
「実際のところそれぞれの国のラーメンがあるけれどね」
「それでもそうなるよな」
「けれどやっぱりね」
「ラーメンはね」
「中華だな」
カムイは考える顔になって頷いた。
「そうなるよな」
「それでだけれど」
「他の料理だってな」
ジュリアとロザリーはそのカムイにさらに話す。
「あれよね。お味噌入れた熊鍋とか」
「あれも石狩鍋だよな」
「石狩鍋もアイヌ料理だぞ」
カムイは真顔で主張する。
「あれもな」
「だからあれも」
「和食じゃないのか?」
「ねえ」
「そうとしか思えないんだけれどな」
「そうか?」
言われるカムイに自覚はなかった。今度はきょとんとした顔になっていた。
「あれこそがアイヌ料理のだな」
「いや、お味噌って日本のだし」
「そのまま日本の味噌使うだろ」
「ああ」
それも認めるカムイだった。彼は少なくとも素直である。
「使うけれどな」
「じゃあそれって」
「和食じゃないのか?」
「いや、アイヌ料理だろ」
まだ言うカムイだった。
「アイヌ連邦の料理だからな」
「何か強引じゃないか?それって」
ロザリーはカムイの今の言葉に怪訝な顔になって返した。
「アイヌでの料理だからアイヌ料理っていうのは」
「そういうのじゃなくてね」
ジュリアも言う。
「あれでしょ。アイヌ民族古来の料理ね」
「アイヌ民族か」
「そうよ。アイヌ連邦ってアイヌ民族の国よね」
「ああ、そうだよ」
それはその通りだというのだ。何しろ国名自体がそれである。それでアイヌ民族の国でないと言うのはあまりにも無理のあることだった。
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