第二百二十四話 先入観その一
先入観
ナンの狼の話を聞いてだ。ジュリアはこう言うのだった。
「コヨーテじゃないのね」
「それだけなんだな」
「まあね」
こうロザリーに返す彼女だった。今二人は教室にいる。
「だってこっちも同じような信仰あるし」
「動物にのか」
「そうよ。トーテニズムよね」
「ああ、それな」
「イロコイにもあるわよ」
あらためて言うジュリアだった。
「ちゃんとね」
「ああ、そうか」
ロザリーもジュリアの今の言葉でわかった。それで納得した顔で頷いてから言うのだった。
「ネイティブアメリカンだからな」
「そうよ。祖先が動物ってこと多いから」
「イロコイ族ってそうなんだな」
「イロコイだけとは限らないわよ」
ジュリアはこのことをしっかりと話すのだった。
「他の部族だってそうよ」
「イロコイってイロコイ族の国じゃないんだな」
「名前はそうだけれど」
それでもだとだ。言葉に出ていた。
「その他にも色々な部族が一緒に暮らしてるわ」
「例えばどんな部族がいるんだ?」
「モヒカン族とか」
あまりにも有名なこの部族の名前が出て来た。
「いるわよ」
「ああ、モヒカン族な」
「名前知ってるわよね」
「勿論だよ。あれだろ?髪型が」
「そう、真ん中だけ立たせてそれで他は剃って」
この独特な髪型で有名なのだ。この時代の連合ではモヒカンや辮髪、そしてちょん髷といった髪型が所謂不良の髪型だとされているのだ。
「あれね」
「モヒカン族って滅んだんじゃなかったんだな」
「ちゃんと皆元気に暮らしてるわよ」
「そうだったんだな。あたしは滅んだって思ってたけれどな」
「モヒカン族の最後ね」
ジュリアはこの古典の作品名を話に出した。
「あれから言ってるのよね」
「けれど滅亡してなかったんだな」
「しっかりと生き残ってるから」
「アパッチとかシャイアンとかスーもか」
「ええ、ちゃんとどの部族も存在してるから」
今もだというのである。
「それで皆で生きてるのよ」
「そうなのか」
「しかも仲良くね」
そうなっているというのである。
「暮らしてるわよ」
「成程な。ネイティブも皆元気なんだな」
「そういうこと」
また話すジュリアだった。
「それでなのよ。ナンの話聞いてね」
「狼ってことにふと思ったんだな」
「こっちでも狼いるけれど」
狼の地球での分布は実に広かったのだ。ユーラシアだけでなく北米にもいた。ニホンオオカミはその亜種にあたるのである。
「それでもコヨーテの方がね」
「メジャーなんだな」
「祖先の神様としてはね」
そちらでだというのである。
「他にもライチョウとかリョコウバトとか鳥もあればバッファローとかも」
「多いな」
「部族多いからね」
だからだというのだ。
「祖先になっている動物もね」
「部族単位でってことなんだな」
「そうなの。モンゴルも部族多かった筈だけれど」
歴史からだ。これは知っているのだった。
「それでも今はそうなってるのね」
「というかそっちはまだ部族単位なんだな」
「部族は残ってるわ」
それは認めるジュリアだった。
「まあ一族みたいな感じでね」
「一族か」
「そうよ。それでなの」
またロザリーに話すジュリアだった。
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