第三十三話 動物以下その一
動物以下
クラスの三馬鹿の二つを占めるテンボとジャッキー。二人は今日も滅茶苦茶な推理をしている。
「よし、謎は全て解けた!」
ジュディの持って来ている推理小説を借りて二人で読んでいる。読みながら叫んでいた。
「ええ、わかったわ!」
ジャッキーが叫ぶ。
「犯人はこの配達の兄ちゃんだ!」
「ええ、絶対そうよ!」
「当たり?」
「わかるでしょ?」
ジュディはそうロミオに返す。
「大外れよ」
「やっぱり」
「それもそのキャラクター単なる端役だから。最初の場面で主人公に牛乳渡すだけで」
「それでどうして犯人だって言えるの?」
「さあ」
ジュディの方が知りたい程である。彼女も言いたげな顔であった。
「密室連続猟奇殺人事件なんだけれど」
「また凄いジャンルだね」
何か話を聞くだけでややこしそうな話だと思った。
「そうでしょ。それで犯人はね」
「何ィッ!?」
「どういうこと!?」
二人が喚きだした。
「何でこいつが犯人なんだ!」
「絶対に有り得ないわよ!」
「誰なの、犯人」
ロミオがそんな二人の叫びを聞きながらジュディに問う。
「最初に斧で頭を割られた人がダイニングメッセージで書いていたイニシャルの人。すぐわかると思うわ」
「そうなんだ」
「間違っても配達の兄ちゃんじゃないから。以後影も形も出て来ないから」
「で、あの二人がそう思い込んだと」
「そういうこと」
ジュディは言う。
「何でそうなったのかわからないけれどね」
二人の思考回路は理解不能であった。彼等は今も叫んでいる。
「何てオチだ」
「あたし達の推理をかわすなんて。この作者は天才ね」
「だそうだけれど」
「あんなのすぐわかるわよ」
勘のいいジュディの言葉であった。
「普通はね。ダイニングメッセージそれからも多いし」
「それで何でわからないの?二人は」
「頭が悪いんじゃないの?」
かなり手酷い言葉だがそう言うしかなかった。
「どう考えてもさ」
「ううん」
「まあいい」
テンボはもう復活していた。
「失敗は誰にだってある」
「そうね」
ジャッキーもそれに頷く。
「そうよ。だから次の推理に挑むわ」
「困ったわ」
そこでクラスで困っている声がした。彰子が困った顔をしていたのだ。
「あれっ、彰子ちゃん」
「どうしたの?」
クラスメイト達がそれを聞いて彼女に声をかける。
「うん。実は明香にプレゼントを買ったのよ。アルバイトで貯めたお金で」
「へえ、彰子ちゃんって妹思いなんだ」
まずは皆それに感心した。
「明香にはこの前買ってもらったから。それで御礼にペンダントを買ったんだけれど」
「それを失くしたの?」
「ええ」
困った顔で皆に頷く。
「折角学校で明香にプレゼントしようと思ったのに。困ったわ」
「おっと、お困りのようですねお嬢様」
「ここは私達にお任せを」
それを聞いてテンボとジャッキーが呼ばれもしないのに彰子の席にやって来た。
「テンボ君、ジャッキーちゃん」
「ここは僕達に任せてくれよ」
「必ずそのペンダントを見つけてあげるわ」
「本当!?」
「本当さ」
彼等は言う。
「だから大船に乗ったつもりでいてよ」
「わかった?」
「ええ、じゃあ」
「それで受けるんだ」
皆二人の申し出を笑顔で受けた彰子にまず驚いた。
「よくまあ」
「勇気あるっていうか」
「お願いしていい?」
「勿論」
テンボが満面に笑みをたたえて頷く。
「待ってよ、今から推理するから」
そう言うと何処からか姿を現わした安楽椅子に座り込む。そして目を閉じて考え込むのであった。まるで何処かのエルキュール=ポワロである。
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