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第四話 自分達だけ名探偵その一
                   自分達だけ名探偵
 彰子達のクラスで事件が起こった。事件自体は些細なものであった。
「おい、これやったの誰だよ」
 その日の日直であるベンがまずそれに気付いた。
 教室の花瓶が割られていたのだ。そうしたことは日常茶飯事である。ところが。 
 それを決して日常茶飯事にしない者達がいた。彼等が今颯爽と姿を現わしたのであった。
「事件か!?」
「あたし達の出番ね!」
 背の高い黒人の少年と日に焼けた肌に見事なシヨートボブの黒髪を持つ緑の目の少女がいきなり出て来た。少年はホームズ、少女はワトソンの格好をしている。
「むむ、これは」
「大事件よ、テンボ」
その少女ジャッキー=ラオアグはフィリピン人、少年テンボ=バディアスはケニア人だ。推理研究会に所属しており自分達こそは天才探偵であると自称しているのである。
「この花瓶を割ったのは誰か」
「それが問題ね」
「ってそんなに問題なのかよ」
 勝手に騒いでいる二人を見てベンが言う。
「事件なんだぞ」
 それに対してテンボが反論する。
「花瓶を割ったのは立派な犯罪だ」
「犯罪、それは人の最大のドラマよ」
「ドリーム=レーンだな、ジャッキー」
「ええ、テンボ」
「ドルーリ=レーンじゃなかったかしら」
 とりあえず花瓶を片付けているブロンドに青い目、そして白い肌の少女がベンに囁いていた。もう一人の日直でロシアの女の子アンネット=ケロセルカである。眼鏡がよく似合っている。スキーと本が好きな女の子だ。
「確か耳が聴こえない探偵よね」
「いつもの間違いだよ」
 ベンがそれに囁く。
「言ってもその側から間違えるから言わない方がいいよ」
「そうね」
「それでね、テンボ」
「ああ」
 二人は花瓶が片付けられているのをよそに話をしていた。
「問題はこの花瓶がどうやって破壊されたのかよ」
「それだな、ジャッキー」
「ええ」
「問題はそこだ」
 テンボはそう言いながら側にたまたまあった椅子に座る。
「そこ私の席よ」
「待て、今推理中だ」
 クラスメイトの抗議も今の彼には意味がない。ホームズの服のまま何やら考えだす。
「全ては俺のここにある」
 自分の頭を指差して言う。
「この灰色の脳味噌の中にな。謎はこれで解かれたようなものだ」
「アルコール=ポケットね、テンボ」
「ああ、ジャッキー」
「今度はエルキュー=ポワロよね」
「あいつ等本当に推理研究会か?」
 それすらも疑わしくなっている。だがそんな話は相変わらず耳からシャットアウトしてテンボは推理を開始する。全ては事件の解決の為である。
 暫く考え込むテンボ。やがて彼は立ち上がった。
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