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第二百十三話 宮殿の中でもその九
「やってみたらいいわよ」
「一緒に入れてもいいしな」
「一つだけ使わないと駄目ってこともないしね」
「そういうことだからな」
「そうそう。それじゃあ」
「よし、じゃあこのカレーうどんはだ」
 ダンはまずそのカレーうどんを受け取ってそのうえでそこに醤油を入れた。そしてそのうえで唐辛子も入れたのだった。
 その二つを入れたカレーうどんを食べてみる。その味は。
「どう?」
「美味い」
 ダンの言葉は一言だった。
「美味い。確かにな」
「そう。やっぱり美味しいのね」
「かなり辛いがそれでも美味い」
 そうだというのである。
「美味い。確かにな」
「じゃあ私も」
「そうだな。それで醤油は」
「ええ」
「あれだな。大豆だな」
「勿論よ」 
 見れば二人が使っている醤油はだ。紛れもなく大豆の醤油だ。それを使ってである。そのうえで話をしているのである。
「ここではしょっつるはね」
「俺達はそうだな」
「ええ。癖のある匂いだから」
「いやいや、その匂いがな」
「いいんじゃない」
 タイ人のフックとベトナム人のネロが反論する。
「しょっつるってナムプラーだよな」
「それだよね」
「ええ、それよ」
 七海はその通りだと答える。どちらも魚から作る醤油である。実は大豆から作る醤油は意外と歴史が浅く古代にはこのしょっつるの系統だったのである。
「同じものよ」
「じゃあ言うぜ」
「カレーにはナムプラーだよ」
 二人はあらためて主張した。
「あの匂いもカレーの匂いに混ざってな」
「いい感じになるわよね」
「そうか?」
「そうかしら」
 ダンと七海は二人の主張には首を捻って返した。
「あの匂いはあれはあれでいいけれどな」
「けれど。カレーにはね」
「合わないな」
「そうよね」
 ダンと七海はそれは否定とまではいかないが懐疑的に返した。この辺りは完全に平行線でありどうしようもないものであった。
 しかしだ。双方互いに主張する。
「カレーに合うけれどね」
「そうだよな」
 ネロとフックはまだ言う。
「ナムプラーはカレーにもね」
「それがわからないのか」
「大豆のお醤油じゃ駄目か」
「そうなのかしら」
 こんな話にもなる。
「あの匂いこそがと思うがな」
「ナムプラーも悪くはないけれど」
「ううん、どうなんだろうね」
「それはね」
 四人で首を捻り合う。平行線の話は懐疑にもなる。
 しかしだ。ここでアロアがカレーうどんを出してだ。何とその大豆の醤油もナムプラーも入れた。二つ同時に入れてみせたのである。
 それから食べる。そして言う言葉は。
「いけるわね」
「おい、両方か」
「また随分乱暴なことをするな」
 フックとダンがそれを見て言う。
「そう来るか?」
「美味いのか、それ」
「美味しいわよ」
 実際に美味いと答えるアロアだった。
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