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第二百十話 何でもいるその四
「むしろ大人しいです」
「あれっ、そうなんですか」
「大人しいんですか」
「はい、大人しいです」
 また言うガイドさんだった。
「肉食ですけれど」
「いや、それ問題ですから」
「肉食っていうのは」
「もうそれだけで」
 二十メートル以上もあって肉食ならばだ。出て来る答えは一つしかなかった。そしてその答えこそが最も憂慮すべきことだった。
「人間一口ですよね」
「食べますよね」
「あの大きな口で」
「アナコンダは爬虫類です」
 ガイドさんのこの言葉も問題なのだった。
「ですから」
「じゃあやっぱり危ないじゃないですか」
「大人しいって。人間食べるじゃないですか」
「それだったら」
「爬虫類は少食ですよ」
 ガイドさんは性懲りもなく言う。
「ですから安心して下さい」
「いや、少食っていいましても」
「滅茶苦茶大きいじゃないですか」
「それもかなり」
 爬虫類は常温動物である。だから食事は変温動物と比べて少ない。しかしここでもアナコンダのその巨大さが問題となるのであった。
「それじゃあとても」
「少食でも人間ぺろりですよね」
「五メートル以上あったら普通に食べられるのに」
「ですから大丈夫ですよ」
 まだ言うガイドさんだった。
「満腹なら襲いませんから」
「じゃあ満腹じゃなかったら?」
「その時は」
「命の保障はできません」
 皆の予想した言葉だた。
「絶対にです」
「ほら、そうじゃないですか」
「食べられるんじゃないですか」
「滅茶苦茶危険じゃないですか」
「はい、確かにアマゾンに一人で会えば命の保障はありません」
 ガイドさんも結局このことは認めた。
「しかしです。バスの中にいますので」
「それで安全なんですね」
「つまりは」
「外に出て会えば何人かで完全武装でないと危険ですよ」
 結局そこに至った。
「注意して下さい」
「じゃあ大人しくないんじゃ」
「そうよね」
「外に一人で会ったら危険って」
「それだけで」
「ですから満腹だと襲わないですから」
 またこう話しはしてきた。
「安心して下さい」
「満腹だと襲わないって常識なんじゃ」
「そうよね、それって」
「結局は」
「いえいえ、鼬ですけれど」
 ガイドさんは今度はその鼬を話に出してきた。哺乳類で胴の長い生き物である。ミンクやフェレットもこの鼬の仲間になるのである。
「鼬は目の前にいる生き物には徹底的に攻撃しますよ」
「つまりアナコンダはそういうことはしない」
「だからいいんですか」
「はい、そうです」
 そういうことだった。
「ですから安心していいです」
「そういえばアマゾンって餌は豊富でしたね」
「何でもいるし」
「そうなんですね」
「アマゾンでは餓えはありません」
 ガイドさんは言った。
「それはありません」
「食べ物はあるんですね、それは」
「しっかりと」
「はい、食べ物はあります」
 それはだというのだ。
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