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第三十話 秘密の花園その一
                    秘密の花園
 ナンシーは素直ではない。クラスではアンと並ぶ臍曲がりである。
「困ったものだよ」
 そんな彼を評してマルティが呟く。
「やりにくいったらありゃしない」
「何がよ」
 当人がそれに聞き返す。
「何がやりにくいの?言ってみなさいよ」
「エロ談義」
「・・・・・・結局それなのね、全く」
 呆れた声を彼に送る。
「それしかないの?本当に」
「他にも色々と興味があるよ」
「何?」
「柔道にサンボ」
「いいじゃない」
 彼は柔道部にいる。他にはサンボもやっている。どちらもかなり強い。
「他は?」
「ビデオにアニメに写真」
「どっちもどうせ怪しいのでしょ」
「聞き捨て悪いなあ」
「全く。そんなのだからカトリも困ってるのよ」 
 やれやれと溜息をついてみせる。
「彼女がいるだけでも奇跡ね、本当に」
「そういうナンシーは」
 マルティはここで反撃に出た。
「あの一年生と」
「なっ」 
 それを聞いて顔を急に真っ赤にさせた。いきなり真っ赤になったのださながら瞬間湯沸かし器である。クールな表情も一変してしまっていた。
「な、何言い出すのよ急に」
「あれを皆が知れば」
「わ、わかったわよ」
 必死の顔でそれに応える。
「言わないわよ。それでいいんでしょ!?」
「うん」
 彼女に対してこくりと頷く。
「そういうことで」
「全く。何でこんなことに」
 とほほと肩を落とす。
「大体ね。私はよ」
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもってないわって」
 気付けばカトリまで来ていた。
「来たの」
「マルティと待ち合わせしていたから」
「そうだったの。何だ」
 言われてそれに頷いた。肩は落としたままである。
「何でいるのかと思ったら」
「何でってナンシー」
 カトリはそんな彼女に声をかける。
「ここ廊下の端よ。普通はいないじゃない」
「まあね」
 見ればその通りであった。三人は誰もいない廊下の端にいたのであった。丁度暗がりになっていて目立たない場所になっているのである。
「ここで待ち合わせって何するつもりだったのよ」
「ちょっとね」
 カトリはそれに応えて述べる。
「打ち合わせに」
「打ち合わせ?」
「今度のデートのことよ」
「ああ、そっちね」
 言われてそれに頷く。
「いいわね、そういうのって」
「ナンシーも打ち合わせとかしないの?デートの」
「だって」
 カトリのその言葉に口を尖らせてきた。
「そんなことできるような仲じゃないし」
「内緒だから?」
「そうよ」
 彼女は答える。
「だって。恥ずかしいじゃない」
「恥ずかしい?」
 マルティは彼女のその言葉を聞いて首を傾げさせてきた。
「そうかな」
「私はそうなのよ」
 彼女は答える。
「ちょっとね。いえ、ちょっと以上に」
「気にし過ぎよ」
 カトリはそう彼女に注意する。
「先輩や後輩と付き合ってる子なんて普通にいるじゃない。中には大学生や中学生と」
「ううん」
「小学生と」
「いや、それは犯罪でしょ」
 マルティの言葉にはすぐに突っ込みを入れた。
「まずいわよ、やっぱり」
「そうなるか」
「なるわよ。まあ小学生同士なら問題ないでしょうけれど」
「ふんふん」
「・・・・・・言っておくけれどその年齢のスケベは犯罪よ」
「あっ、それはないから」
 マルティはすぐに言葉を返した。それはわきまえていた。
「流石に」
「そう?だったらいいけれど」
「うん。安心して」
「よかった。まあとにかく私はこれで」
「そういえば何で貴女ここにいるのかしら」
「気にしないで」
 強引に話を終わらせてきた。
「たまたまだから」
「たまたまって」
 それを聞いてカトリはかなり釈然としないものを感じた。
「幾ら何でもそれは」
「いいじゃない、だから」
 バツが悪い顔で返す。
「その、とにかくお邪魔だったわね。それじゃあ」
「え、ええ」
 ナンシーは強引に姿を消した。後には二人だけが残った。
「ねえ、まさかナンシーって」
 カトリは彼女の去って行く後姿を眺めながらマルティに声をかけてきた。
「ひょっとして」
「多分そうだろうね」
 彼もそれに答える。
「それしかないよ」
「そうよね」
 それは自分でもわかった。だから頷くことができた。
「待ち合わせしていたんでしょうね」
「だからさ、ほら」
 マルティはもう小さくなっているナンシーの後姿を指差した。見れば背中を小さくして何かゴソゴソとやっているようである。そんな彼女を指差していた。
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