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第二百四話 モンゴルのヨーグルトその二
「ちゃんとね」
「ゲルは欠かせないか」
「ゲルと馬はね。それに馬は」
「馬は?」
「お乳も出してくれるし」
 にこりとした笑みになる。表情はかなり豊かであった。
「だからね」
「ああ、モンゴルは牛はいないからな」
 ルシエンも気付いた。牛は農業に使う家畜である。放牧もされるがそれはあくまで牧場の中でのことである。遊牧にはあまり適した生き物ではないのだ。
「だからだな」
「そうよ、馬よ」
「そうだな」
「それに羊ね」
 それもだというのだ。
「羊のお乳も飲むわよ」
「それにその乳製品もか」
「それもね」
 それもだというのである。乳は飲むだけではすぐに腐ってしまう。それで加工して乳製品にしてだ。そのうえで食べるのである。これも人類の叡智の一つだ。
「あるから」
「馬に羊か」
「そうよ。普通に売ってるわよね」
「ああ」
 この時代ではミルクにしても乳製品にしてもだ。牛のものだけとは限らないのだ。その馬に羊、それに山羊に豚のものまである。カイギュウのものすらある。
 そしてだ。ナンはその馬や羊のものを言うのだった。
「私はそっち派なのよ」
「食べ方や飲み方以上にか」
「そうよ、馬や羊のお乳がね」
 好きだというのである。
「そっちがいいから」
「そうか、食べるものが大事か」
「ルシエンは違うの?」
「俺は食べるのはな」
「どれでもいいのね」
「どのミルクも好きだからな」
 だからだというのである。
「それでいいさ」
「そうなの」
「しかし御前ミルクは牛とかは駄目なのか」
「駄目って訳じゃないけれど」
 首を少し捻りながらの言葉だった。
「あまり食べないわね」
「そうか」
「飲まないし」
 食べると飲むはここでは一緒になっていた。
「やっぱりね」
「カイギュウは駄目か」
「モンゴル人よ」
 答えはそこにあるというのだ。
「海はね」
「だからか」
「っていうかモンゴル出るまでカイギュウのミルクとかあるって知らなかったし」
「トルコでもあるが」
「トルコじゃないから」
 あくまでモンゴルであるというのだ。そこだというのだ。
「モンゴルは草原の国よ」
「しかしどの惑星でも海はあるな」
「あることはあるけれど私は内陸の方にいたから」
「だから知らないのか」
「淡水性のアザラシとかカイギュウがいる星でもなかったし」
 他には淡水性のイルカや鯨もいる。カイギュウといってもただ海の中にいるだけではないのである。星によってはそうしたものもいるのだ。
「だからね」
「知らなかったのか」
「そう、知らなかったの」
 また言うのだった。
「ちょっとね」
「図鑑とかで知っているだけか」
「あっ、それも知らなかったわ」
 それもだというのだった。
「全くね」
「そうだったのって」
「知らなかったの」
「だから草原にいたから」
 理由はとにかくそれに尽きた。
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