ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第二十九話 どちらが先にその一
                   どちらが先に
 ギルバートはアンへの注視を開始した。それは実にわかり易いものであった。
 いつも彼女を見ているのだ。気付かない方がどうかしていた。
「やっぱりなあ」
 マルコはその予想通りの反応にかなり呆れていた。じっとアンを見続けている彼を見ながら呟く。
「あれでわからないと思っているのかな」
「みたいよ」
 それにビアンカが答える。
「本人はね」
「どうかしてるよ」
 マルコはそれを聞いてあらためて述べた。
「あれでわからないなんて」
「どうなるかな」
 セドリックがそれを見て呟く。
「あの二人これから」
「後はアン次第ね」
 ビアンカはそう述べた。
「彼女がどう動くかよ」
「アンが」
「一方だけ動いてどうにかなるものじゃないじゃない」
 彼女の言葉は実に的を得ていた。そういうこともわかっているのである。
「そうでしょ?二人のことなんだから」
「そうだね」
 セドリックはその言葉に頷いた。
「確かに。だから何が起こるかわからないんだけれど」
「それが面白いんだけれどね」
 見方がかなり意地悪ではある。ビアンカ自身もそれはわかっている。
「けれどね」
 彼女はまた言う。
「本当にあれで。わからないって思ってるのかしら」
「みたいだよ」
「本人は」
 二人はまたビアンカに対して述べる。
「やれやれ。全く」
 ビアンカはそれを受けて困った顔でふう、と溜息をつく。それからまた述べた。
「何かと大変ね、アンも」
 そのアンは今も普通に漫画を描いている。やはりそこにはルビーも一緒にいてアシスタントを務めている。そのルビーが彼女に声をかけてきた。
「ねえアン」
「わかってるわ」
 アンは彼女に答える。漫画のプロットを見ながら。
「見えてるから」
「そう。だったらいいけれど」
「急にどうしたのかしら」
「さあ?」
 ルビーはその言葉に首を傾げさせる。
「何かあったんじゃないかしら」
「その何かが問題ね」
 アンは述べる。
「急にチラチラと」
「チラチラどころじゃないわよ」
 ルビーはこう訂正を入れてきた。
「堂々と見てるじゃない。ずっと」
「そうね」
 その訂正に対して頷いた。
「言われてみればまさにそれね」
「心当たりないわよね」
 ルビーは彼女に問う。彼女もプロットを見ながら話をする。
「やっぱり」
「やっぱりもきっぱりもそうよ」
 アンはいささか変わった表現を使ってきた。
「そうじゃないとどうしたのかなんて思わないじゃない」
「そうね」
「そうよ。しかしまあ」
 ここで彼女はうっすらと笑ってきた。
「悪い気はしないわ」
「そうなの」
「ええ。だって」
 その笑みが楽しげなものになっていく。本当に楽しそうだ。
「見られてるんだし」
「そういうことね」
「そういうこと」
 声も実に上機嫌なものになっていた。
「何かプロットも進むわ」
「しかしいきなりどうしたのかしらね」
 ルビーはチラリとギルバートの方を見て述べた。
「それまで何もなかったのに」
「まあ見ているだけだったらいいけれど。いえ」
 ここで言葉を変えてきた。
「もっと積極的だったらね。私だって」
「じゃあそうすれば?」
 ルビーは呆れも入った突き放した調子で言葉を返した。
「そうしたら楽なのに?」
「だって」
 急にアンはしおらしくなった。いつもの勝気でクールな様子は何処へやらである。
「あれよ。素直に言えたらさ」
「こんなことしてないってこと?」
「漫画は描いているでしょうけれどね」
 彼女は述べる。
「それでもよ。やっぱり」
「勇気出してみたら?」
 ルビーはアドバイスしてみる。
「いっそのこと」
「無理なのよ」
 今度は俯いてしまった。
「そういうのって私。ほら、今までだって色々とつっかかってるし」
「皆気付いてると思うけれどね」
「えっ」
 それを言われると顔が真っ赤になった。髪の毛も赤い為かなり目立ってしまっている。
「そうだったの!?」
「って貴女」
 ルビーは今度は本格的に呆れてしまった。
「普通わかるわよ。私だって知ってるし」
「ルビーにはいつも言ってるから」
 親友同士である。だから心置きなく言っているのである。そうした気さくな一面もアンにはあるのである。
「だから」
「だからってね。私やウエンディだけじゃないわよ、知ってるのは」
「困ったわね」
「何を今更」
 言葉に更に容赦がなくなる。ルビーもきつい時はきついようである。
小説・詩ランキングsite_access.php?citi_id=254078182&size=200cont_access.php?citi_cont_id=766008103&size=200


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。