第三話 スポーツはいいけれどその三
「超高速スライダー!」
先程のシュートに匹敵する。とんでもない高速スライダーが来た。またしてもミットの中で回転が残っていた。
「成程な」
タムタムはそのスライダーを受け止めてまた冷静な声を述べる。
「これで第二第三の変化球が出来上がったな」
「魔球だ!」
フランツは沿う主張する。
「名付けてギャラクシアンボール一号二号三号だ!」
「そのネーミングには一体どういう意味があるんだ?」
「格好いいだろう!」
「・・・・・・それだけか?」
「それ以外に何があるんだ!」
「・・・・・・いや、いい」
これ以上名前について話しても無駄だというのがわかっただけだった。
「だがなフランツ」
「ああ」
「このボールはあまり使うな」
「どうしてだ?」
「魔球だろう?切り札はいざという時の為に取っておけ」
「いざという時か」
「そうだ。三つ合わせてもそんなに投げられないぞ」
「そうか、切り札だからな」
「ああ」
本当は別の理由がある。変化球は肘や爪に影響を及ぼす。それが鋭ければ鋭い程。だから多投はあまりよくないのだ。これで呼称したピッチャーも多い。ましてや身体が完全に出来上がっていないところがある高校生ならば尚更だ。だからタムタムはそう言ったのだがフランツにはあえてこう言った。こう言えば彼が納得するとわかっているからだ。
「わかったな」
「ああ、じゃあまずはコントロールか」
「そうだ、そしてスタミナ」
「つまりは足腰か」
「わかってるな。じゃあ」
「よし!また走るぞ!」
この日だけでも何度目かわからないがグラウンドで思いきり叫ぶ。
「この銀河の果てまで!行くぞタムタム!」
「まあ待て」
まだピッチング練習があるのにいきなりそちらへ頭が飛ぶ相棒を窘める。
「まずは投球練習をやってからな」
「おっと、そうか」
「落ち着いてやれ、メニューはまだあるからな」
「そうだったな。日々の努力が魔球を作り上げていく」
「ああ」
「そして勝利を」
どうやら彼にとっては魔球の開発が第一のようである。だが努力を忘れないのは見事だった。
「行くぜジャパニーズ=ハイスクール=ベースボールに!」
名付けてJHBである。日本の高校球児達の憧れの場所の一つだ。他にもそうした大会があるが八条学園はこれに参加しているのである。
「そして群がる強打者達を次々に三振に取り!」
勝手にそう決め付けている。
「真紅の優勝旗は俺達が手にするんだ!俺はやるぜ!」
「そうか、じゃあもっと投げろ」
「よし!」
知らず知らずのうちに相方の言葉に乗っている。
「投げて覚える」
「そうだな。まずは投げる」
「同時に投手の肩は消耗品だ」
「!?どういうことだ?」
彼は難しい言葉を理解することは苦手なのだ。
「つまり投げる練習は程々にしとけってことだ」
「その分走るのか?」
「まあそういうことだ」
さりげなくフランツに投げ過ぎを戒める。
「わかったな」
「よし!皆で行くぜ!」
またしても同じことを叫ぶ。
「皆で憧れのあのグラウンドに!いいな!」
「ああ、わかった」
手前勝手に熱血するフランツとそれに合わせるタムタム。そんな二人を彰子達が見ていた。
「フランツ君のこと?」
「その通り」
レミが彰子の言葉に答える。その目の前ではフランツがいちいち叫んで自分で名付けた球種を叫びながら投げている。何とストレートにまで名前をつけているのだ。
「剛球!!ジャイロボール!!」
ストレートが放たれる。確かに速い。そして球威もノビも桁外れだ。
「えっ、横からだと見えないよ」
彰子もそのボールを見て驚く。何とボールが見えないのだ。
そしてミットに収まる。すると重い音だけが響き渡る。
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