第百九十四話 カーテンコールその五
「今丁度できたところだよ」
「できたところって」
「お料理作っていたの」
「マトンの脛肉を煮たんだ」
それだというのである。羊はこの時代でもかなりポピュラーな肉である。よく食べられているものである。
「それとその煮た後でスープも作ったしね」
「スープもなの」
「それもなに」
「野菜スープをね。人参に玉葱、それに蕪も入れて」
わりかし豪勢である。
「あとジャガイモやガーリックも入れたんだ」
「それとサラダ?」
「ポテトサラダね」
「そう、それもね」
これは二人が作ったものなのですぐにわかった。どちらにしても食べるものである。
「それと一緒に」
「それだったら」
「後は」
さらに話すのであった。
「御飯なの?それとも」
「パン?」
「パンだよ」
そちらであった。
「食パン買ってきたから」
「食パンなの」
「それにしたの」
「何でなの?」
彰子がその理由について兄に尋ねた。
「どうして食パンにしたの?」
「だって羊だから」
最初はそれが理由だった。
「それに他のも洋食だからね」
「それでなの」
「別にいいと思うけれど」
こう彰子だけでなく明香に対しても述べた。
「食パンで。別に」
「そうね」
明香が兄のその言葉に頷いた。
「私もそう思うわ」
「そう思ってくれるんだね」
「ええ」
最初に頷いたのはやはり明香だった。
「そう思うわ」
「彰子は?」
「私もそれで」
彼女もいいと頷いた。
「いいと思うわ」
「よし、じゃあこれでいいね」
貫之は妹達の言葉を聞き終えて満足した顔で頷いた。
「主食は食パンでね」
「けれど兄さん」
しかしここで明香が兄に対して問う。
「若し私達が御飯がいいって言ったらどうしたの?」
「二人共そんな我儘言わないじゃないか」
少なくともそうした我儘ではない二人である。基本的に出されたものは全て食べるし基本的に好き嫌いもあまりないのである。これはいいことだった。
「そうだろ?だからね」
「それは考えてなかったのね」
「ああ、そうさ」
にこりと笑って応える兄だった。
「じゃあ食べるか」
「うん、じゃあ」
「食べましょう」
「それでデザートはね」
デザートもあった。御馳走の後はデザートである。この流れは最早黄金定率と言っていいまでに決まりきったものであった。
「バナナチップスだから」
「あっ、バナナチップスなの」
それを聞いて笑顔になる彰子だった。
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