第百九十話 独特な絵その五
「それはどうなの?」
「ええ」
それはというのであった。
「したつもりよ」
「ならいいわ」
それを聞いてであった。にこりと笑う姉だった。どうやら彼女に対してはそういたことの方を大事に思っているようである。
「それならね」
「そう、いいの」
「いつも言ってる通りよ」
また微笑んで話すのだった。
「お掃除はしっかりとね」
「そうよね。奇麗にしないとね」
「駄目だからね」
このことは真面目な口調になっていた。
「しっかりとしないとね」
「そうね」
「それでだけれど」
彰子はここまで話したところで話を少し変えてきた。その言うことは。
「ねえ」
「何?姉さん」
「中に入ろう」
こう言うのである。
「中にね」
「ええ。それじゃあ」
「朝トレーニングをしたから」
朝練から話すのだった。
「夕方はないわよね」
「ないわ。それはね」
「そうなの。やっぱり一日二回のトレーニングは」
少し困った顔での言葉であった。
「ハードよね」
「流石にそれはないから」
「運動部とは違うのね」
「私達はあくまで歌うことが部活だから」
そちらがメインだというのである。トレーニングはあくまでトレーニングでしかないというのである。メインではないというのだ。
「だから」
「そうよね。じゃあ」
「ただ。服は普段は」
「普段は?」
「ジャージよ」
それはだというのである。
「ジャージだから」
「そういえばそんなこと言ってたわね」
「ジャージは動きやすいから」
理由はこれだった。
「いつも衣装を着るというのも」
「できないのね」
「動きにくいわ。衣装をつけたリハーサルか本番でないとね」
「着ないのね」
「後宮からの逃走だと」
上演するオペラのことも話に出る。話をしながら劇場の中に入っていく。中に入るともう部員達が右に左にと動き回っていた。
部室に向かいながらだ。さらに話すのであった。
「衣装はドレスだから」
「あのお姫様のドレスよね」
「あっ、今回の演出だと私達はアラビア風の服になるわ」
「あのヴェールの?」
「それとはまた違って」
それはまた違うというのである。アラブの服といっても色々なのである。そのヴェールの服だけとは限らないのである。
「他のね」
「他の?」
「ハーレムの服なの」
そうした服だというのだ。
「その服になるかも」
「それだと動きやすそうね」
「けれどやっぱりジャージの方が動きやすいの」
それでもだというのだ。
「それに汚れてもいいし」
「あっ、そうよね」
「ジャージはだからいいのよ」
これが彼女の言うことだった。
「普段はね」
「そういうことね。それじゃあ」
「着替えましょう」
ここで更衣室に入った。二人でだ。
そして着替えて舞台に出てだ。練習をはじめる。しかし今日の練習は二人ではなかった。
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