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第百八十六話 姉への言葉その一
                  姉への言葉 
 部活から家に帰ると。いつもの様に姉が夕食を作っていた。台所からその優しい声が来た。
「お帰りなさい」
「只今」
 いつもの挨拶である。まずはそれからだった。
「今日の晩御飯はね」
「何なの?」
「ポークチャップよ」
 それだというのである。
「それと薩摩芋のサラダ」
「薩摩芋なの」
「そう、それ」
 まさにそれだというのである。
「薩摩芋の中にオニオンと胡瓜と魚肉ソーセージを入れたの」
「美味しそうね」
「明香薩摩芋好きだから」
 彼女を優先してのことだというのである。
「だから考えたのよ」
「有り難う。それじゃあ楽しみにしてるから」
「それとね」
 メニューはまだあるのだという。話す彰子も楽しそうである。
「スープもあるから」
「スープは何なの?」
「オニオンスープよ」
 今度はそれだった。スープにも玉葱が入っているのだというのだ。
「それで御飯は十六穀御飯にしたわ」
「十六穀なの」
「これはお兄ちゃんが好きだけれど」
「私も好きよ」
 実際に彼女の好物でもあった。彼女の好きなものは全て知っていてそのうえで料理を作っている彰子だった。妹のことがいつも念頭にあるのだ。
「それでデザートはね」
「デザートは?」
「買ってきたものだけれど」
 彰子はここでは少し申し訳なさそうに言ってきた。その間に明香は一旦リビングに来た。そのうえでそのまま廊下なしで続いているリビングにいる姉の話を聞くのである。
「それでいいわよね」
「別に悪くはないわ」
 これは本音であった。
「デザートまでなんて」
「いつも買ってるじゃない」
 これはその通りであった。実際にいつも買っていたりする。それは絶対に忘れないのだった。
「アイス買っておいたから」
「アイスクリームなのね」
「そうよ、ブルーハワイ」
 それだというのである。
「それとバニラ買っておいたから」
「そうなの。それだったら」
 それを聞いた明香はソファーに向かう。そこの端に鞄を置いて自分は中央に座ってである。まずはテレビのスイッチを押してそのうえでまた姉に問うのだった。
「姉さんはどっちを食べるの?」
「両方」
 返答はこれだった。
「両方のつもりだけれど」
「両方って」
「明香も両方よ」
 すぐにこの言葉も来た。
「それは安心していいから」
「私も両方なの」
「バケツみたいに大きいの二つ買って来たのよ」」
 笑顔と共の言葉だった。
「当分それでデザートいけるから」
「バケツみたいなって」
「安かったのよ」
 まさに家庭の人間の言葉だった。
「だからね」
「それで買ったの」
「定価の半分だったの」
 具体的な値段まで話された。
「だから買ったのよ」
「安かったのね」
「ここぞって思ってね」
 言葉には会心のものもあった。
「それでなのよ」
「じゃあデザートは暫くはアイスなのね」
「その二つでいいよね」
「いいわ」
 テレビを観ながら放す妹だった。アニメである。
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