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第百八十三話 アイドルタレントその五
「実際にね」
「そうよね、やっぱり」
「ただしよ」 
 それでもここで七海はさらに言ってみせたのだった。
「あんたの歌もね」
「私の歌も?」
「いいわよ」
 にこりと優しい笑みを浮かべての言葉だった。
「とてもね」
「いいかしら」
「ええ、いいわよ」
 また彼女に告げた。
「充分過ぎる程ね」
「そうなの。私も歌も」
「歌が上手いにこしたことはないわ」
「上手なのになの」
「何でもそうでしょ?上手ならね」
 にこりと笑って彰子にさらに話していくのであった。
「それに越したことないじゃない」
「だからなのね」
「そう、何でもね」
 そうだというのである。
「上手ならね。それにだけれど」
「ええ」
「歌好きでしょ」
 こうも言ってきたのであった。
「彰子って」
「それはね」
 そしてその問いに対して素直に答える彰子であった。
「聴くのも歌うのも好きよ」
「だからよ。上手いのよ」
「好きこそものの上手なれってことかしら」
「そうよ。だから歌が上手いのよ」
「だからなの」
「子供の頃からずっと歌っていて。そうね」
 ふと思い立った様にも言うのだった。
「妹さんと二人で歌ったりしたかしら」
「ええ、よく二人で歌ったわ」
 七海の予想通りであった。彼女はそうして歌っていたというのであった。
「幼稚園の頃から色々な歌をね」
「だから上手いのよ。好きだから歌ってね」
「そうしてさらになのね」
「歌えば歌うだけ上手になっていくから」
 七海の言うことは同じであった。
「だからいいのよ」
「じゃあ私はこれからもどんどん歌えば」
「それだけ上手くなっていくわ。そうする?」
「そうね」
 少し間を置いた。この辺りはおっとりとした彰子らしい動きであった。そうしてそれからゆっくりと七海に対して言ってきたのであった。
「それじゃあ」
「歌いましょう。いいわね」
「うん。じゃあ」
「今度は何を歌うの?」
 早速であった。笑いながら彰子に言ってきた。
「どの歌にするの?」
「そうね。今度はね」
「ええ、今度は」
 こうして彰子は楽しく歌っていく。その声は確かに見事なものであった。その歌唱力もである。どちらもかなり見事なものであった。


アイドルタレント   完


                 2010・1・25
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