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第二十六話 ナンのお家その二
「陛下と日本の天皇陛下は縁戚関係でもあるしな」
「そうだったわよね」
 これは本当の話である。琉球王室と日本の皇室は縁戚関係にある。十九世紀に琉球王家が宮家になった時にはじまったものであるが今でもそうなのである。
「関係は深いぞ」
「日本だった時もあるしね」
「ああ」
 その言葉にも答える。
「一応民族は違うが結構混血はしてるな」
「そうよね。ぱっと見ただけじゃ日本人と琉球人ってわからないから」
「御前の視力でもか」
 ここでダンは冗談を言ってきた。
「見分けられないんだな」
「あのね」
 ダンのその言葉にまずは憮然とした顔を見せてきた。
「幾ら目がよくてもそんなのは見分けられないわよ」
「そうか」
「当たり前でしょ。目がいいのは草原で生きているからよ」
 ナンはそれを説明してきた。
「それとこれとは関係ないわよ」
「まあそうだよな」
「モンゴル人を何だと思ってるのよ」
「とりあえず何か俺達とは全然違う世界に生きてるとは思ってる」
 ダンはそう返した。
「それもかなりな」
「そんなに違うかしら」
「だったらな」
 ダンは一つ提案してきた。
「たまにはクラスの皆でも呼んだらどうだ?面白いぞ」
「そうね」
 ナンもその言葉を頭に入れてみた。考えてみると結構面白そうである。
「じゃあそれやってみるわ」
「そうだな。じゃあこれからな」
「ええ。今日ね」
「今日かよ」
 ナンの即断にかなり引いた。
「せめて明日とか言わないか?」
「決めたことはすぐにやる」
 ナンはやけに教訓めいた言葉を出してきた。
「それがモンゴル人の生き方なのよ。そうじゃないとね」
 さらに言う。
「とんでもないことになるのよ。草原じゃね」
「そうなのか」
「草原には草原の掟があるのよ」
 ナンの言葉が真剣なものになってきていた。
「まず決めたことはすぐにやる」
「だからか」
「それじゃあ今日ね」
「わかったよ」
「あれ、わかったよってことは」
 ナンはダンのその言葉を受けてふと彼の横顔を見てきた。
「あんたも来るの?」
「駄目か?」
「いえ、別に」
 だがそれを断るつもりはナンにもなかった。
「あのね、一つ言っておくけれどね」
「ああ」
 何か話が妙な方向に転がってきているようだとダンは思いはじめていた。
「女の子が一人でいるパオに入るってことは」
「何なんだよ」
 目を顰めさせてそれに問う。
「あれよ。結婚するってことよ」
「おい、ちょっと待て」
 憮然とした顔でナンに言い返す。
「俺は誰も一人で来るとは言ってないぞ」
「わかってるわよ。けれどね」
「何だよ、けれどねって」
 何か売り言葉に買い言葉になってきていた。ダンも普段のクールさは消えて少し焦ったようになっていた。
「一人で来るのなら覚悟してよね」
「馬鹿言え」
 彼は言う。
「俺はそんなことは」
 ナンからプイと顔を背けての言葉であった。
「別にする気は」
「何だ、そうなの」
「そうなのって御前」
 また話がややこしくなってくる。
「何言ってるんだよ」
「そうよね」
「そうだよ」
 ダンはその口を少し尖らせて言ってきた。
「何でそうなるんだか」
「あのさ」
 ナンがさらに言ってくる。
「私は別にいいんだけれどさ」
「おい」
 ダンはその言葉にまた突っ込みを入れてきた。
「そりゃどういう意味だ」
「だから言ったままよ」
 ナンの言葉の調子は少し売り言葉に買い言葉といった感じになってきていた。ダンもそれは同じである。
「まあこっちはそれでさ」
「言っておくけれどな」
 ダンはそれにまた返す。言葉の応酬は少し洒落にならない域にまで達してきていた。
「それ本当にやったらどうなるかわかってるんだろな」
「わかってないで言うと思う?」
「馬鹿馬鹿しい」
 ダンは思わずこう言った。
「そんな冗談で」
「冗談で済ませるならそれでいいがな」
 無理矢理冗談で話を収めることにした。ナンが乗るかどうかは別にして。
「本気だったらよ」
「どうするつもりよ」
「決まってるだろ」
 彼はナンを横目で見据えて言う。
「そちらのしきたりに従うぞ」
「そうなの」
「ああ」
 彼は鋭い声で答えた。
「シャワーを浴びてからな」
「モンゴルにシャワーなんてないわよ」
「何っ!?」
 この言葉にダンは一瞬言葉を詰まらせた。
「そりゃどういうことだ」
「だって草原よ」
 ナンはその言葉に答える。
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