第二十五話 手綱は誰の手にその一
手綱は誰の手に
トムは従妹のメアリー、弟のシッドの三人で暮らしている。アパートに三人暮らしというわけである。
「じゃあ行って来るね」
「行ってらっしゃい」
大抵登校はトムとシッドが先である。メアリーは二人を送り出した後でゆっくりと学校に向かうのが常である。
赤茶色の髪にブラウンの目をした奇麗な顔立ちをしている。実はトムは彼女が好きだったりする。
「意外って言えば意外だよな」
そんな彼に対してルシエンが述べる。
「御前が年上の女の人好きだなんて」
「意外かい?」
「ああ」
ルシエンは答える。
「もっと元気のいい娘が好きなんだって思ってたよ」
「レミみたいな?」
「まあそんなところだな」
ルシエンはトムの言葉にそう返した。
「そういう女の人ってどっちかというとマチアが好みっぽいんだけれどな」
「どうして?」
「ああいう性格だろ?」
彼は言う。
「どっかで甘えん坊じゃないかって思ってな」
「成程」
「何かえらい言われようだな」
それを聞いてそのマチアが二人のところにやって来た。
「俺ってそんなに甘えん坊に見えるか?」
「何となくな」
ルシエンはそう返した。
「違ってたら悪いな」
「まあ実は嫌いじゃない」
「予想通りか」
「エイミーのお姉さん達は結構気になるしな」
「へえ」
トムはマチアの告白に目をパチクリとさせてきた。
「それはまた」
「けれどな」
だがマチアはここで少し苦い顔を見せてきた。
「俺何か言うのが怖いんだよな。そういうのって」
「そんなのは度胸だな」
ルシアンはそんな彼に対して言い切ってきた。
「俺はアンネットにだな」
「御前はまた度胸があり過ぎるんだよ」
マチアは彼にこう言い返した。
「玉砕上等で向かって行ってるじゃないか」
「アンネットは俺のものだ」
強い声できっぱりと述べてきた。
「何があってもな」
「また強いねえ」
そんな彼を見てあらためて感嘆の声を漏らす。
「まあそんなんだからアンネットも相手をしてくれてるんだろうな」
「男は振り向かせるもんだ」
「そうなのかなあ」
だがトムはそれを聞いて懐疑的な様子を見せてきた。
「ルシエンのは違うと思うけれど」
「そうだな」
それにマチアも頷く。
「御前のはかなり違うと思うぞ」
「俺はそうは思わないがな」
「まあ思うのは勝手だし」
「そうだな」
「何だ、二人共随分言ってくれるな」
ルシエンはトムとマチアにそう言い返した。
「折角話に乗ってやってるというのに」
「それじゃあさ」
それを受けてトムはルシエンに言ってきた。
「何かいい方法知ってるの?ルシエンは」
「そんなのは決まってるだろう」
ルシエンはトムの問いに傲然と胸を張ってまで述べてきた。
「あるんだ」
「じゃあ何だ、それは」
マチアもそれに問うてきた。二人共興味津々である。
「将を射るにはまず馬だって言うだろ」
ルシエンはそう誇らしげに言ってきた。
「馬か」
「ああ、この場合はだ」
トムに答える。マチアはそれを聞いてふと言った。
「じゃああれだな」
「どうした?」
「メイミーか、鍵か」
二人に返した言葉はこれであった。
「そういうことだな」
「まあそうなるな」
ルシエンもそれは認めてきた。
「よし、じゃあ」
「けれどな」
「何だよ」
ルシエンの止めるような言葉に動きを止めてきた。
「その馬をまず見ろよ」
「どういう意味だよ」
「そのままさ、いいか」
「ああ」
ルシエンの顔が急に真剣になったのでそれを真面目に聞くことにした。それも恋路のうちである。この道は一筋縄ではいかないのである。
「馬だって色々だ」
「それ位俺にだってわかるぞ」
「話は聞けよ。それでだ」
そうマチアに念を押す。彼もかなり真面目に話をしていた。かなり乗っていたのである。
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