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第百七十二話 ファタ=モルガーナその一
                  ファタ=モルガーナ
 王子はルシエンで王女がアンネットである。これは何とか決まった。
「何か役があちこち変わって大変だったなあ」
「何でこうなったんだ?」
 ギルバートも首を傾げていた。彼にしてもだった。
「そもそも」
「最初はね。私も魔女のつもりだったのよ」
 そのプロデューサーであるアンネットの言葉である。
「実はね」
「それで変わったって」
「しかも急にか」
「こっちの方がいいって思ったからよ」
 だからだというのである。
「それでだけれどどうかしら」
「まあ俺も主役やれるならいいし」
「それにだ」
 ギルバートは道化師の格好のまま述べた。
「僕の役は最初からだったが」
「ええ、それはもう代えなかったわ」
 それについては不動だというアンネットだった。
「基本として考えたのよ」
「僕が基本なのか」
「もう一つの基本は皆が出られるようにってことだったけれど」
 それもだというのだ。
「この作品って登場人物多いからそれは楽だったのよ」
「そうだな。悲劇役者や喜劇役者も出るからな」
「それでそれはすぐにクリアーできたの」
 そのことについてはというのだった。
「それで道化師の役はよ」
「僕にした理由は何だ?その基本は」
「意外性よ」
「意外性なのか」
「そうよ、それだったのよ」
 まさにそれだと本人に対して話す。
「それであんたにしたのよ。道化師はね」
「そうか。意外だったのか」
「私の王女も意外でしょ」
 微笑んで自分の役についても述べるアンネットだった。
「ちょっとばかり」
「そうだな。それはな」
「アイススケートみたいに魔女で踊るのもいいかもって思ったけれど」
 最初はそう考えていたというのである。考えてみればこれもかなりのことだ。なお流石にやっている人がいないのでバレエは取り入れていない。彼女だけできてもなのだ。
「それはね」
「止めたんだな」
「私が魔女だったらそのままじゃない」
 こう言ってまた微笑む彼女だった。
「そうでしょ?正直のところ」
「僕はそこまでは思わないがな」
「けれど実際そう思われてるのよ」
 この周囲のイメージをよくわかっている彼女だった。わかっているからこそあえて、というところにその考えがあるのであった。それもかなり強くだ。
「だからそれを逆手に取ってね」
「観る人間を驚かせるのか」
「インパクトよ」
 今度言ったのはそれだった。
「まずはインパクトよ」
「それで観客を驚かせてか」
「そして引き込むのよ」
 顔が今度は不敵そうな笑みになっていた。
「そういうことなのよ」
「成程な」
「それで俺が王子なのは何でなのかな」
 ルシエンがここで彼女に問うてきた。
「それも意外性なのか?」
「そうよ。あんたも結構王子ってイメージじゃないじゃない」
「どっちかっていうと武将とかそういうのだよな」
「まんまアラビアンナイトのね」
 こう言うのはやはり彼がイスラム圏出身だからだ。トルコはこの時代では連合最大のイスラム教国となっている。かつてのオスマン=トルコの栄光を取り戻しているのである。
「だからそこで意表を突いてよ」
「それで王子か」
「まあ私とあんたのカップリングは」
 ここではかなり恥ずかしそうな顔になりはした。
「あれだけれどね」
「かなりわかりやすいな」
「自覚してるわ」 
 顔が赤くなっているところにそれが出ていた。
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