第百六十五話 人骨都市その五
「皆武骨でばかでかいってイメージあるでしょ」
「ええ」
「それはな」
「否定しないよ」
皆実際にこう答えるのだった。
「ロシアっていったらやっぱり」
「それだよね」
「ねえ」
「ほらね」
皆の声を受けてまた言う彼女だった。
「皆こう思ってるから」
「武骨でばかでかい」
「やっぱりそれは」
「どうしようもないみたいね」
彼女も皆の言葉を聞いて頷くしかなかった。
「まあそれでもよ。繊細な一面もあるから」
「ロシアに繊細」
「何か想像できないけれど」
「チャイコフスキーとかそうじゃない」
あまりにも有名なロシアの作曲家である。その名声や評価についてはこの時代においても残っていることから言うまでもないものである。
「あの音楽は繊細でしょ」
「ああ、確かにね」
「あの人の音楽は」
「ロシアは武骨でばかでかいだけじゃないのよ」
とにかくこのことを強調して言うのだった。
「繊細なロシアもちゃんとあるから」
「ちゃんとね」
「あるの」
「そう、あるのよ」
必死になって言うアンネットだった。
「そういうのも今度のこの文化祭で見せたいわね」
「じゃあ紅茶もだな」
フックがここで言ってきた。
「その繊細さを強調するんだな」
「いえ、そのままよ」
強調はしないというのである。
「そのままロシアの味でいくわよ」
「ロシアの味って」
「それで繊細になるの」
「そうよ。元々繊細だからよ」
いけるというのである。皆は懐疑的だがアンネットだけは本気である。彼女だけはそれは可能だと考えているのであった。そのままの味で。
「いけるわよ」
「どうかなあ」
「いけるかな」
「そうよね」
しかし皆は懐疑的な顔なのだった。その顔を見合わせている。
「そのままの味でいいって」
「そういえば」
ここで皆あることにも気付いたのだった。
「ここって日本だけれど」
「日本のロシアンティーってどうなのかしら」
「そうよね。どんなのかしら」
そのことについて思うのだった。当然ながら日本人には日本人の味の嗜好がある。そしてロシア人にはロシア人の嗜好があるのである。
「ロシア人から見てどうなの?」
「そのままの味なの?」
「全然違うわね」
するとこう答えたアンネットだった。
「作り方や味付けは同じだけれどね」
「違うの」
「同じなのに?」
「そうなのよ。ほら」
ここで彼女が言うことには。
「お茶もジャムもあれじゃない。日本のでしょ」
「日本のだから作り方とかが同じでも」
「違ってくるの」
「そう、ロシアのお茶はロシアのお茶の味がするから」
だからだというのである。
「だから同じロシアンティーでもね」
「味が違ってくるってことか」
「成程ね」
「そういうこと。だからね」
さらに言うアンネットだった。
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