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第百五十六話 オペラハウスへその四
「あいつとは本当にな」
「それにあんた今フリーじゃない」
「フリーでも何でも相手が大事なんだよ」
 これは確かにその通りだった。彼にしても誰でもいいというわけではないのである。
「あいつと一緒にいたらそれこそ始終喧嘩じゃねえかよ」
「それもまた楽しじゃない」
 いささか無責任にも思える今のルビーの言葉であった。
「喧嘩するのもね」
「じゃあ今御前と喧嘩してやろうか?」
「私喧嘩嫌いだから」
 自分で言っておきながらの今の言葉であった。
「別にいいわ」
「おい、また随分と無責任だな」
「そもそも今ここであんたと喧嘩する意味ないじゃない」
 上手い具合にフックをかわしながらのやり取りであった。
「そうでしょ?別にね」
「今の言葉にむかついたんだけれどな」
「怒りはそれで収めるべきよ」
 言いながら指し示すのは彼の目の前にあるケーキだった。やたらと大きなザッハトルテである。フックが注文したのはそれであったのだ。
「そのケーキ食べてね」
「くそっ、相変わらず口が上手いな」
「別に上手くはないわよ。ただね」
「ただ。何だよ」
「実際にあんたラビニアと何だかんだと一緒にいるじゃない」
 それでもこのことは言うのであった。
「大嫌いだって言っているわりにはね」
「あいつとはな。腐れ縁になっているからな」
 今のルビーの指摘には目を顰めさせて反論するがあまり反論にはなっていなかった。
「だからだよ。別に何ともねえよ」
「本当に?」
「嘘言って何になるんだよ」
「本当に本当かしら」
 無意識のうちに目を逸らす彼に対して幾分意地悪く問うルビーであった。
「本当に何もないのかしら」
「何かあったらどうするっていうんだよ」
「別に。ただ」
「ただ?」
「面白いかなって思って」
 だからだというのである。多分に興味本位であるのだった。
「それだけだけれどね」
「そう思うのなら好きに思っとけばいいだろ」
 いい加減やりきれなくなってザッハトルテを食べることに専念しだしたフックだった。
「俺はもうこれ以上は言わないからな」
「わかったわ。まあ話を元に戻してね」
 こう言って実際に話を戻しにかかるルビーであった。それは当然春香に関するものであった。
「意外と見極めは簡単だと思うわ」
「簡単なんだ」
「まず春香ちゃんにはいつも一緒にいる人が二人いるから」
 まずはこのポイントを指摘するのであった。
「二人ね」
「ええと、一人は」
「あいつね」
「そう、あの馬鹿兄貴」
 見事なまでにはっきりとした表現であった。
「洪童。あいつは見たもの聞いたものを何でも大騒ぎして言っちゃうから」
「わかりやすいよね」
「確かに」
 皆このことは実によくわかった。実感さえできた。
「もう。何ていうか」
「全く何も考えてないから」
「だからあいつから自然に情報も入るし」
 それもあるというのである。
「一つはこれで大丈夫よ。マークも何もしなくていいわ」
「自動的にあいつがやってくれるからかあ」
「こっちとしてもやり易い話だけれど」
「そしてよ」
 それを確かめてからさらに話を進めていくルビーであった。
「二人目だけれど」
「ああ、彼女だね」
 セドリックは今のルビーの言葉に対してすぐに突っ込みを入れた。
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