第百五十四話 真っ赤なお店その八
「これで後は冷麺を食べられます」
「そう、それじゃあ」
「後は注文だけれど」
「いらっしゃい」
皆が見守る中であの店員の兄ちゃんが席に座る春香に声をかけてきた。皆に対するよりもさらに砕けて気さくな感じであった。
「今日も来たんだね」
「はい」
その兄ちゃんに礼儀正しく応える春香であった。物腰も実に謙虚なものである。
「宜しく御願いします」
「こちらこそ。それで何を食べるんだい?」
「冷麺を御願いします」
「やった」
「これでいいわ」
皆それを聞いてまずは密かにガッツポーズになった。無論食べながらである。
「それとカルビクッパと」
さらにであった。
「プルコギとホルモンも下さい。それぞれ三人前」
「えっ!?」
「プルコギとホルモン三人前!?」
皆それをまずは聞き間違えかと思った。しかし別の意味で聞き間違えだったが外れではなかった。
「すいません、間違えました」
「そうだよね」
「三人前なんて幾ら何でも」
「五人前御願いします」
こう来たのであった。何と五人前である。皆これには唖然としてしまった。
「五人前って」
「嘘でしょ」
「それと生レバ、あとはサラダも御願いします」
「あいよ。デザートは?」
「フルーツ盛り合わせを御願いします」
デザートまでというのである。
「それで御願いします」
「わかったよ。それじゃあね」
「はい」
こうして注文は終わった。しかし皆話を聞いていて唖然であった。
「春香ちゃんって大食だったんだ」
「あんなに食べるなんて」
「まあそれには驚いたけれど」
これについてはあくまで驚いただけなのであった。今彼等は自分達の本来の目的ははっきりわかっていた。わかっていない人間はいなかった。
「何はともあれね」
「そうだよね。鋏だよ、鋏」
「どうなるのかしら」
皆春香に密かに注目しているのであった。その鋏を使うのかどうかで、である。
「果たして」
「使ったら止める?やっぱり」
「さもないとあいつが五月蝿いわよ」
洪童のことに他ならない。この時のあいつとは。
「さて、それじゃあ見せてもらいますか」
「そうだね」
こうして彼等はじっくりと見ることにした。まずはそれからであった。
真っ赤なお店 完
2009・9・13
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