ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第百五十三話 二つのパスタその六
「それに冷麺も。どれも正しい食べ方があるんだよ」
「それはわかったけれど」
「殆ど煮るか焼く料理じゃない」
「っていうか冷麺以外」
 実はそうなのだった。韓国料理といえばまさに煮るか焼くかである。これはこの時代でも同じでその二つの料理法が異常に多いのである。
「おまけにどれも辛いし」
「これは冷麺だってそうだし」
「その冷麺の食べ方が許せないんだよ」
 なおも言う洪童だった。
「何度も言うが鋏で途中で切ってそれで食べるのはな」
「じゃあさ、洪童」
「あんたに聞きたいけれど」
 皆頑強に主張し続ける彼に対して問うた。
「冷麺の正しい食べ方って」
「どんなのなの?」
「そうだよね。それだよね」
 セドリックもそんな皆の言葉に頷いて応える。
「鋏を使うのが間違ってるっていうんなら正しい食べ方があるみたいだけれど」
「それって一体」
「どんなのなの?」
「決まってるだろ」
 皆の問いにこれまたそれだけでは答えになっていない答えを返すのだった。
「それはな。普通に箸とスプーンを使ってな」
「それで食べるの」
「麺は噛み切るんだよ」
 彼は断言した。
「自分の歯と顎でな。そのとことんまで長い麺を噛み切ってな」
「それで食べるっていうのね」
「オーソドックスに」
「それしかないだろ。違うか?」
 問うているが異論を許さない口調だった。
「もうな。冷麺っていったらな」
「何かかなり強硬な主張だけれど」
「言っていることは正攻法ね」
「っていうかオーソドックスじゃない」
 皆彼の話を聞いて言った。
「てっきり特別な食べ方があるのかって思ったけれど」
「ごく普通の食べ方じゃない」
「だからなんだよ」
 しかし洪童はだからこそだとここでも主張するのだった。
「そうじゃなきゃ意味がないんだよ、冷麺を食べるのはな」
「じゃあ掻き混ぜるのは?」
「後でキムチなりコチュジャンをたっぷり入れるのは?」
 コチュジャンとは韓国の調味料である。所謂味噌であるが韓国らしく唐辛子がふんだんに使われており真っ赤になっているのである。
「それはいいの?」
「どうなの、そこは」
「それは一向に構わないんだよ」
 急に寛容になる洪童だった。
「韓国料理はとにかく掻き混ぜるんだよ」
「ああ、それはね」
「知ってるよ」
 この学園にも韓国人は多い。彼等は常に熱く辛いものを徹底的に掻き混ぜて食べる。それはとりわけビビンバやクッパ等を食べる時によく行う。
「それをしないと駄目なんだよ」
「じゃあ掻き混ぜるのはいいと」
「もうどれだけやっても」
「いいんだよ、それが美味いんだから」
 今度はこんなことを言うのだった。
「掻き混ぜたのがな」
「じゃあキムチやコチュジャンを途中から入れるのも」
「いいんだ」
「どんどん入れるべし」
 こうだというのである。
「好きなだけな」
「それで鋏は駄目」
「何かねえ」
「それが法律なんだよ」
 勝手に法律にしてしまうのだった。
小説・詩ランキングsite_access.php?citi_id=254078182&size=200cont_access.php?citi_cont_id=766008103&size=200


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。