「そうだねえ」
のんびりと、彼は言った。
「そんな日がもし来たなら……」
彼は「彼」を見て、微笑んだ。
「君のエネルギイが尽きるまで、君自身が『夢』を見ればいい」
「……どういうこと?」
「彼」の「夢」であるはずの彼は、不思議なことを言い始めた。
「疑似人格しかいない世界だって、いいじゃないか。『夢』なんだから」
彼の言葉は、怖いくらいに優しかった。
「君が会いたい人を選んで生まれ変わらせたっていいし、公平にランダムに選んだっていい。でも、最後まで『夢』を見ていればいいんじゃない?」
「で、でも」
「彼」は口ごもった。
「そんなの、何の意味が……」
「あくまでも『意味』にこだわるんだな」
彼は苦笑する。
「『意味』……それは、君が『生きている』から、だ」
「…………」
「彼」はは、と息を呑んだ。
「それに、君は独りにはならないよ」
彼はつぶやくように言った。
「そのための――『ユダ』だろう?」
「…………」
「彼」は瞬きを繰り返し、やがて口元を緩めた。
「……彼は、きっと彼女に会いたがるだろうな」
「彼女?」
「それは……面白そうだ」
「彼」は聞き返した彼の言葉には答えないまま、赤い瞳を細める。
「ま、その時は君にも付き合ってもらうけどね」
彼は無言で肩をすくめた。
方舟は進む。
遠く深い、深淵の闇に向かって――光を、目指して。
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